沸騰伝熱は幅広く応用されているにも関わらず、そのメカニズムには不明な点が多い。特に沸騰初期の気泡発生プロセスに関してはほとんどわかっていないと言っても過言ではなく、その原因はナノスケールでの検証が十分に為されていないことに尽きる。その一方で、原子間力顕微鏡(AFM)による固液界面計測により、ナノバブルと呼ばれる微細な気泡の存在が明らかとなっている。 ナノバブルについては、マクロな気泡とは大きく異なる接触角、古典理論から導かれる値よりもはるかに長い寿命など、従来の理論では説明できないいくつかの特性が実験的に報告されている。これらの特異な性質を説明しようとこれまでにいくつかの理論が提唱されているが、全ての実験結果を説明できる統一的な理論はいまだに存在せず、現在まで議論の対象となっている。最近では固液界面ナノバブルに関する研究も基礎研究から応用研究にまで発展しているが、特に固液界面ナノバブルと沸騰現象との関連は興味深い研究対象である。 本研究では、AFMの中でも最も高感度な固液界面計測および3次元フォースマッピング計測が可能なFM-AFMを用いて、固液界面ナノバブルの安定化メカニズム解明および固気液三相界線の物理を分子スケールで理解することを目的として研究を進めてきた。しかしながら、平成29年度までの研究により固液界面ナノバブル近傍の3次元フォースマッピング像を得るのは非常に困難であることがわかり、これまでに得られたナノバブルの変形・合体をとらえたAFM像の解析により、三相界線にて生じるピニングと呼ばれる現象を調査した。また、最終年度には濡れ性の異なる平滑な表面が隣り合う部分においてナノバブルが生成されやすいという現象に着目し、親水-撥水複合面における固液界面ナノバブルの生成に関して実験による調査を行った。
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