研究実績の概要 |
自発核生成温度を超える高温面噴流沸騰冷却では,高温面上での濡れ面先端位置,すなわちWetting Front(以後WFと記す)の挙動が冷却特性を支配する.本研究では,固液接触界面温度計測と同期した高速ビデオカメラ撮影に基づいて,WF位置の挙動に及ぼす噴流速度,噴流サブクール度,高温面初期温度の影響とWF位置を決定するための濡れ開始の境界条件を検討した.そして,WFの熱的境界条件と固体側軸対称非定常熱伝導との連成計算によるWFの挙動予測を実験結果と比較して境界条件の妥当性を検討した. 最終年度は,半径方向に7箇所に測温点を設置したNi伝熱面を用いて,初期温度350℃の下向き円板のサブクール噴流非定常冷却実験を行った.各測温位置にWFが到達した時の固液接触界面温度は250℃~300℃の範囲で,半径方向の距離の増大と伴に低温側に偏倚した.さらに,WF位置が噴流半径よりも十分大きい領域では,定常衝突噴流冷却中の限界熱流束の発生状況と同様の沸騰状況を示した.つまり,よどみ点から高温面に沿う液膜流は非沸騰の熱的助走区間の外側より拡がる激しい発泡を伴う核沸騰域を生じる.高々数mmの沸騰区間の外側で液膜は全て高温面から飛散しWFを形成する.また,円形噴流のPlateau-Rayleigh不安定が支配する液膜流の脈動が前進と後退を繰り返すWF挙動周波数に対応することが分かった.一方,冷却開始直後はよどみ点近傍で生じる自発核生成で不安定な固液接触が繰り返される. そこで,固液接触がよどみ点近傍に限定される冷却初期とそれ以降に分けて,WFを定める解析モデルを検討し,非平衡液体温度場の自発核生成計算および非一様熱流束場への限界熱流束の予測式の拡張によりWFの固体側非定常熱伝導計算を実施した.予測結果は,時刻のべき乗則に従うWF位置の挙動と定性的な一致は示されたが,今後さらにモデルの改良が必要である.
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