研究課題/領域番号 |
16K06129
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研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
鈴木 隆 上智大学, 理工学部, 教授 (20206494)
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研究分担者 |
一柳 満久 上智大学, 理工学部, 准教授 (00584252)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | エンジン制御 / ガス流動モデル / 冷却損失モデル / ポリトロープ指数 |
研究実績の概要 |
ガス流動モデルの構築およびCFD, PIVを用いたモデルの検証を行った.計算を簡略化するため,シリンダ内の流れ方向に基づき,①スキッシュ領域と燃焼室領域の双方向流動による乱れ成分,②スワール方向の流動による乱れ成分,③軸方向の流動による乱れ成分,④燃料噴霧による乱れ成分という4種の乱れ成分に分類し,それぞれの定式化を行った.①はスキッシュ領域と燃焼室領域の質量保存則を解くことで各領域から吹き出す速度を評価し,乱れ成分を定式化した.②は角運動量の保存則を解くことで,乱れ成分を定式化した.③はピストン運動を基本とした軸方向速度のうち,乱れ成分の割合を実験的に導出した.④は広安ら (1980) による確率密度関数を用いた噴霧モデルを適用した.ガス流動モデルの検証は,CFDによる計算およびPIVによるシリンダ内の速度分布測定により行った.CFDでは,運転条件ごとの空間的な乱れ分布を評価した.乱流熱伝達の一般論から,小径渦よりも大径渦が圧倒的に熱伝達に影響を及ぼすことがわかっているため,大径渦の乱流エネルギーの評価が可能なLarge Eddy Simulation (LES) を採用し,回転数などの運転条件と大径渦がもたらす乱流エネルギーとの相関関係を明らかにした.一方,PIVでは,シリンダ内の乱れ成分のうち,①,②,③に対して検証する.当該研究機関には,可視化単気筒エンジン (石英ガラス製のシリンダを設置) およびPIV装置が導入されているため,シリンダ内の流動測定は問題ない.ただし,ガス流動と相互関係を有する燃焼状態は,別途測定する必要があるため,燃焼解析システム を導入した.最終的に,PIVによる速度計測結果を元に評価した乱れ成分と,ガス流動モデルによる計算結果を比較検討を行った.両者に差異が見られたことから,CFDの結果も鑑み,ガス流動モデルに補正係数を導入した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
2017年5月に行われる公益社団法人・自動車技術会・2017春季大会にて下記の論文発表を行うレベルに達していることから、当初の計画以上に進展していると考えられる。 「ディーゼル機関におけるオンボード用壁温推定のための筒内ガス流動モデルの開発」、「ディーゼル機関におけるオンボード用ポリトロープ指数予測モデルの開発」 また、関連論文として以下の論文を発表済みである。4th International forum on Heat Transfer, IFHT2016にて、「DEVELOPMENT OF ENGINE CONTROL SYSTEM FOR AIR-TO-FUEL RATIO USING HEAT TRANSFER MODEL AT INTAKE SYSTEM」、「MODELLING OF UNSTEADY HEAT TRANSFER PHENOMENA AT INTAKE SYSTEM OF INTERNAL COMBUSTION ENGINE」、「REDUCTION METHOD OF COMBUSTION FLUCTUATION USING ESTIMATION TECHNIQUE OF MAXIMUM IN-CYLINDER PRESSURE OF INTERNAL COMBUSTION ENGINE」 Journal of Japan society for Design Engineeringにて、「内燃機関の吸入空気流量推定のための吸気系非定常伝熱現象のモデリング」
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今後の研究の推進方策 |
熱損失推定モデルの構築および熱流束測定によりモデルの検証を行う.熱損失推定モデルは,エネルギー方程式を基盤として構築する.エネルギー方程式の温度,速度,圧力,密度に対し,平均値と変動成分に分解することで,乱れ成分を考慮した方程式に展開する.本申請研究では,温度境界層内に対して,以下のモデル化を行うことで式を簡略化し,CFDを必要としないモデルを構築する.①温度と速度の乱れの変動成分に対して,壁と垂直方向にエンタルピと運動量が輸送されると仮定する.②レイノルズ応力に対して運動量輸送理論を適用し,また流体塊が混合のために移動する距離はプラントルの仮定を適用する.③温度境界層内の速度分布は,プラントルの仮定に基づき対数速度分布と仮定する.④主流における渦の角運動量は保存されると仮定する.上記の仮定を用いると,エネルギー方程式はベッセルの微分方程式として展開され,解析解から熱伝達率を求める一般式が得られる.ここで,シリンダ内壁を6領域 (①スキッシュ領域上部のシリンダヘッド,②燃焼室領域上部のシリンダヘッド,③シリンダライナ,④ピストン頂面,⑤ピストン側壁,⑥ピストン底面) に分割する.各部位の乱れの影響因子ごとにガス流動モデルを組み合わせることで,空間位置ごとの熱伝達率を変化させることが可能となる.熱損失推定モデルの検証は,燃焼室壁面の熱流束を実測することにより行う.各部位での熱流束を測定するため,単気筒エンジンのシリンダをアルミ製に変更し,熱流束センサーの設置およびデータ取得を行う.この際,燃焼室壁面からの熱損失 (冷却損失) だけではなく,排気損失による熱損失も評価することが,系全体の熱バランスの評価につながる.排気損失を評価するために,排気再循環の圧力を測定する必要があり,EGR用の圧力計を購入予定である.
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