研究課題/領域番号 |
16K06131
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
木村 元昭 日本大学, 理工学部, 教授 (70204998)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 噴流 / 拡散制御 / DBDプラズマアクチュエータ / 火炎 / 化学活性種 |
研究実績の概要 |
本研究ではノズル出口に同軸型DBD(Dielectric Barrier Discharge)プラズマアクチュエータ:DBD-PAを形成し,プラズマの誘導流により速度分布を操作し,空気,ヘリウム,二酸化炭素の拡散制御に関する知見を得,また,この制御方法をバーナー火炎に適用し,プラズマにより促進されると考えられる,活性化学種の増加と火炎の安定,変形,吹き飛びとの関連性を明らかにする. 噴流の研究では,主噴流を空気,二酸化炭素としてDBD-PAをバースト駆動させ,渦輪の発生を制御することで噴流制御を試みた.誘電体の材質はマシナブルセラミックス,内部電極,外部電極の材質をリン青銅とし,厚さ0.5mmの円筒状に加工した.これを誘電体にはめ込みDBD-PAを構成しノズル先端に設置した.ノズル出口内径はd=10mmである.噴出レイノルズ数をRe=2000~10000とし,渦の生成を制御できるかをハイスピードカメラを用いて観察し次の知見を得た.1.DBD-PAの誘起流によりノズル出口近傍で渦輪,縦渦が発生し,可視化からではあるが拡散が促進することを観察した.2.噴流の自然周波数と印加バースト周波数がロックインする周波数領域があり,ここでは渦輪の発生を制御できる. バーナー火炎の研究では,プロパンと空気の予混合火炎にプラズマを印加した.ハイスピードカメラによる直接撮影,また,化学活性種を同定するために自発光法分光測定,および吸光法分光測定を行い以下の知見を得た.1.当量比0.95 において,印加電圧4kV,10kV,16kV で希薄状態の火炎の吹き消えを抑制できた.2.印加電圧12kV から16kV においては化学活性種の増加を確認することができた.3.吸光分光実験より,空気に印加電圧16kV印加するとオゾンの吸光帯であるハートレー帯と考えられる吸収波長帯が見られた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
噴流の研究において,レーザーライト可視化法とハイスピードカメラにより噴流初期領域の渦輪の形成を入念に調査することにより,噴流が有している渦輪発生の周波数とDBD-PAの誘導流によるバースト周波数の関係性を調査し,その関連性を明らかにすることができた.同時に当初予定していた熱線流速計による速度測定を試みたが,高電圧電源より電極に電圧を印加する際に熱線流速計の出力にノイズが混入することが判明したため,回路によるフィルタリング及び配線の取り回しとシールド対策を施したが効果的なノイズ除去に至らなかった.PIV測定も考えられたが,計測が低速度に限られることや速度測定値のあいまい性からLDV測定に切り替える方向転換をした.旧式のLDVは保有していたが,今回の測定には不適合のため新規購入をめざし各社のLDVより選定作業を進め新規購入に踏み切った.海外の受注製品であり高額な製品のため契約・納品までに時間を要し,平成29年2月納品となった.このため,流速測定は皆無の状態で年度を終えた.流速測定は平成29年度より実施する. バーナー火炎の研究では,ハイスピードカメラによる火炎撮影,分光測定により化学活性種の有無,オゾン発生の有無などを多面的に測定・観察し,多方面の知見を得ることができた.しかし,当初の目的である誘導流の影響と化学活性種などの影響の切り分けを明確にするには,新たな見解が必要であることが判明し,その考案に時間を要している.また,印加電圧4kVでは分光結果より未だDBDプラズマは発生していないのであるが,バーナー火炎の吹き飛びが抑制される結果が得られた.この結果を説明するための,理論と実験に関して考案する必要が生じているが,この方面の研究調査を含め時間を要している.
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今後の研究の推進方策 |
噴流の研究に関しては,平成28年度に取得した可視化情報をもとに渦輪生成から渦輪の崩壊による噴流拡散の過程を詳細に分析するとともに,平成29年度以降は,新規購入したLDVを用いて速度分布,速度変動分布及び統計値を求め可視化より得られた知見と速度情報を合体して,それらの傾向をまとめる.これらの結果を踏まえ,まず大気中に空気を噴出した場合の拡散制御にDBD-PAを適用し,印加する周波数・電圧・波形およびバースト周波数と間欠率による影響と,その操作特性をまとめる.さらに,平成30年度では大気中にヘリウム噴流,二酸化炭素噴流などの浮力噴流を噴出した場合の噴流拡散にも拡張する予定である. バーナー火炎の研究では,プロパン予混合バーナー火炎にDBD-PAを適用し,当量比,印加電圧・周波数を変更しながら,火炎形状の形状を高速度カメラで撮影分析すると共に,分光器により火炎面からの自発光解析を実施して,活性化学種を同定し,相対的な発光強度の変化を測定する. 特に14kV程度の高電圧では誘導流と活性化学種の影響がともに現れるので,その影響の切り分けが難しい.一つの方法として同じ高電圧でも印加周波数を高くすることにより予混合気体が電圧変動への追随を抑えた状況を作り,活性化学種の影響を明らかにしようと考える.また,4kV程度の印加電圧ではDBDプラズマが発生しないにも関わらず火炎の吹き飛びが抑制される原因を明らかにするため,音場,電場などの他の要因が火炎に影響し燃焼速度に変化をもたらし保炎される仮説を立てて理論的及び実験的にこの現象にアプローチする予定である.
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