MEMS(Micro Electro Mechanical System)のような微細デバイスは、主に圧力、加速度等のセンサーとして数多く用いられているが、微小な熱を検出するセンサーとしての応用例は数少なく、さらなる研究が必要な状況である。本研究ではMEMSを用いた熱量計を開発し、ナノ粒子の直接的な微小熱容量測定を実現することにより、バルク材の比熱容量としてはこれまで考慮されていなかった表面比熱の影響を系統的に検証することを目標としている。今年度は、熱量計の設計・作製を完了し、さらに測定系の整備を行った。熱の差異を検出するには示差式の測定が有意であるため、今回開発したMEMSセンサーは双子形の構造とした。MEMSセンサーの基板は、11mm×9mm×t1mmの単結晶シリコンに、厚さ25μmのシリコン酸化膜をつけたものである。酸化膜は、シリコン基板への熱流出を防ぐため、厚さ25μmとした。その酸化膜上に、チタン膜(50nm)をつけ、その上に、試料加熱用ヒーター、試料温度測定用センサー、熱補償用ヒーターのパターンを白金膜(100nm)により形成した。さらに微小な示差熱を検出するため、白金とクロムを用いた複数の熱電対によるサーモパイル構造を形成した。MEMSセンサーの外枠のソケットについては、測定中の試料の様子を観察できるように、試料設置場所の上部空間を開け、顕微鏡が試料に近づくことができる構造とした。また、コンタクトプローブを使用することにより、測定の簡便化を図った。測定系については、測定に必要な計測器(温度コントローラ、ナノボルトメータ、DC電源等)を準備し、測定が実施できる環境を整えた。研究成果としては、MEMS熱量計のマクロなモデルとなる示差走査熱量計を用いた微粒子の比熱容量測定評価に関する内容で、関連学会でのポスター発表を行った。
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