研究課題/領域番号 |
16K06142
|
研究機関 | 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工学群) |
研究代表者 |
中村 元 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工学群), システム工学群, 教授 (80531996)
|
研究分担者 |
山田 俊輔 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工学群), システム工学群, 准教授 (90516220)
|
研究期間 (年度) |
2016-10-21 – 2019-03-31
|
キーワード | 対流 / 伝熱促進 / 赤外線カメラ |
研究実績の概要 |
管内流の伝熱促進(あるいは抑制)を目的として,円管内流に矩形波状の脈動を与えた実験を行った.伝熱測定には申請者が開発した赤外線高速イメージング定量測定法を用いた.H29年度に実施した内容を以下に示す. 1.熱膜流速計の温度変動補償:管内乱流に伴う水流の温度変動によって熱膜流速計の出力が変動するが,これが補償できていなかったため,熱膜センサから水平に1.5mm離れた位置に素線径0.1mmのK熱電対を設置した.これにより,数Hz程度までの温度変動の補償が可能になった. 2.定常乱流の熱伝達率測定:脈動を付与しない定常乱流において熱伝達率測定を実施し,圧力損失およびヌッセルト数が既存の実験式と一致することを確認した. 3.流れの変動に対する熱伝達変動の遅れのモデル化:流れの急加速,急減速における流れ場の変動と熱伝達率変動を,レイノルズ数を系統的に変化させて測定した.その結果,熱伝達率の変動は流れ場の変動と比べて遅れが存在すること,この遅れは,急加速時,急減速時それぞれにおいてタイムラグΔtと一時遅れ時定数τの組み合わせによってモデル化できることを示した. 4.矩形波状脈動流における熱伝達変動のモデル化:電磁弁のON/OFFにより発生する脈動流において,弁のON時間,OFF時間を系統的に変化させた実験を行った.その結果,レイノルズ数が同じであれば,タイムラグΔtと一時遅れ時定数τはON時間とOFF時間にほとんど依存せず,一定値として扱うことが可能であることを示した.また,本実験条件では,ON時間が短いほど伝熱促進率が高くなることを示した.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
交付申請時に計画していたH29年度の研究は,以下の通りである. 1.脈動を付与しない定常乱流において測定を実施し,流速,圧力損失,およびヌッセルト数が既存の実験式と一致することを確認する.その上で,レイノルズ数を系統的に変化させた矩形波状の脈動を与えて,流動変動と伝熱変動の同時測定を行う. 2.脈動の周波数,振幅,デューティ比(ON時間の比率),バルクレイノルズ数を変化させた実験を行う.得られた結果から,各条件における流れの乱流化・再層流化の様相の違いを調べ,それが伝熱機構や流動抵抗に及ぼす影響を明らかにする. このうち,1.は「研究実績の概要」で記述したように,ほぼ計画通り完了した.また,2.については,赤外線イメージングにより乱流化・再層流化の様相の違いを観測したと共に,それが熱伝達率変動に及ぼす影響を示したが,流れの脈動に伴う流動抵抗の評価がまだできていない.
|
今後の研究の推進方策 |
H30年度には,流量測定と差圧測定の時間応答を改善し,流れの脈動に伴う流動抵抗の変動の測定を可能にする予定である.昨年度末に応答速度の優れた流量計と差圧計を購入したため,まずはこれらを実験装置に組み込み,流れの急加速,急減速に伴う流量変化および圧力変化を正しく測定できることを確認する.その上で,脈動時の流動抵抗と伝熱促進の関係を調査する予定である.なお,流れの急減速時にウォーターハンマーによる大きな圧力変動が発生するため,これが実用化の妨げになる可能性がある.そのため,電磁弁を閉じる速度を調整してウォーターハンマーの影響を軽減することを検討している.また,流れの減速速度が熱伝達変動に及ぼす影響を調査することも検討している. H29年度には「研究実績の概要」で示した研究成果が得られたため,これらの成果を第9回乱流熱物質移動国際シンポジウム(THMT18, 2018年7月)および第16回国際伝熱会議(IHTC16, 2018年8月)で発表する予定である.また,H30年度までに得られた成果は,学術論文や研究室(防衛大学校 システム工学群 機械工学科 熱工学講座)のWeb等で公表する予定である.
|
次年度使用額が生じた理由 |
計測器(主に電磁流量計)の購入経費が予定より少なく済んだこと,電磁流量計および差圧計を装置に組み込む経費(継手,導圧管等の作成に要する経費)が未使用であることが,次年度使用額が生じた主な理由である. H30年度には,電磁流量計および差圧計を装置に組み込むために継手や導圧管等を新たに作成する.また,電磁流量計の出力がパルス出力のみであるため,それをアナログ信号に変換する変換器を導入する予定である.また,実験装置の改良や伝熱模型の作成に必要な材料を購入し,加工を依頼する予定である. また,H30年度には第9回乱流熱物質移動国際シンポジウム(THMT18, 2018年7月)および第16回国際伝熱会議(IHTC16, 2018年8月)において研究成果を発表するため,これらに必要な旅費及び参加登録費を支出する予定である.
|