研究課題/領域番号 |
16K06144
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
堀 憲之 筑波大学, システム情報系, 教授 (70312824)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | デスクリプタ形式 / 離散時間化 / 次数変化 / 初期値設定 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は異なる次数を表現できるデスクリプタ形式の汎用的離散時間化手法を開発し、次数変化を見越したディジタル制御系設計手法の基盤を確立することである。この目的を達成するために研究計画では三つのフェーズを挙げていたが、今年度は主に第一番目である「静的/微分モードを次数変化の痕跡と解釈できるような新しい離散時間化の定義と、それにもとづいた具体的な離散時間モデル化手法の開発」に集中して研究を行った。その結果、連続時間における次数変化をモデル内のモード変化と解釈できることを示し、次数が変化してもモデルサイズを変更せずに連続的なパラメータ変化によるモード数変化と捉えることが可能となった。これにより、見通しの良いモデルベース制御系の解析や設計が可能になると考えられる。また、これと深く関係する事象として、次数の増加が離散時間モデルの数値精度を悪化することの具体例を検証し、原因としてステップ不変離散時間モデルに特有のサンプリング零点の発生や可制御可観測性との干渉が関係している可能性を示唆した。同時に、極はステップ不変モデルと同じであるがサンプリング零点は発生しない極零対応モデルにおいては、数値精度の悪化は比較的小さく有利であることを示した。更に、これまでは許容初期値しかデスクリプタ形式を設定できなかったが、従来提案していた関数の離散時間化の定義を超関数に拡張することにより、非許容初期値も設定できるようにした。その結果、「デスクリプタ形式の初期値を任意に設定する」問題に対して初めて一般的な方法を与えることができた。これにより、次数変化によるモードの移動があっても、自由に初期値を修正できるようになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の計画は一つ目のフェーズのうち次の3テーマを解決した。1)次数変化を内包できるデスクリプタ形式の新しい内部構造とその解釈の提案。2)スイッチング電源を具体例とした連続時間系の次数上昇が可制御可観測性の喪失につながる傾向にある事実の調査。3)デスクリプタ系の離散時間モデルの厳密な定義化を可能とするための、従来の関数離散時間化定義を超関数離散時間化定義へと拡張するための理論整備。 1)の成果は1件の国際会議論文、2)の成果は2件の国際会議論文(うち1件は国内で開催)、3)の成果は1件の国際雑誌論文として投稿中である。 当初考えていた課題のすべてに取り掛かったが、一部今後の改良を目指す必要があると考えるため、概ね順調とした。
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今後の研究の推進方策 |
当初立てていた二、三年目の計画に沿って研究を始める。最終フェーズの目標はPIM法と呼ぶ手法を伝達関数ベースからデスクリプターベースに拡張し、次数変更を見通しよくすることである。その実現のために、まずはPIM法を伝達関数ベースから状態方程式ベースに拡張することに取り組む。その後に、これまでの知識と経験をもとに、状態方程式ベースからデスクリプターベースへの拡張を試みる。 また、当初の計画にはなかった非整数の次数を持つシステムの離散時間化にも挑戦する。初期値の設定はシステム次数にも影響を受けるが、非整数次系の場合には大きな問題になっており、何らかの理由があると考えているからである。特に、静的・微分モードを含むデスクリプタ形式では初期時刻におけるインパルスの発生に関連して、適切な初期値の設定法が曖昧であった。非整数階微分においては微分も積分と同様に大局的な演算であり、初期値の組ではなく、初期関数となる。この問題は次数の本質や定義について検討するよい機会である。
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次年度使用額が生じた理由 |
3月の短期雇用に必要な額を確保していなかったため、研究資料にあてた額を調整した結果、未使用額が発生した。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度計画している研究資料の購入に充てる。
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