研究課題/領域番号 |
16K06146
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
石野 裕二 埼玉大学, 研究機構, 技師 (50645968)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 磁気浮上 / 太陽光発電 / 搬送システム |
研究実績の概要 |
電磁石吸引型磁気浮上搬送装置には軌道に電磁石を並べる方法と,搬送車車体に電磁石を搭載する二つの方法に分類される.前者は車体に電力を必要としないため,原理的には完全永久非接触浮上が可能であるが,コスト的には不利である.後者はコスト的には有利であるが,搬送車車体に電力供給を行う必要があるため,従来では常時または一時的に接触給電する必要があった.これまでに,後者の搬送車に太陽電池を搭載し,太陽電池による非接触給電を行うことにより,低コストかつ,原理的には永久完全非接触浮上する搬送車とする,屋内用のソーラー磁気浮上搬送装置の開発を行ってきた. 本研究ではこれを拡張し,屋外の照度環境下において24時間,365日の浮上を目指している.磁気浮上機構にはゼロパワー制御を適用し,電磁石で消費される電力を抑えている.また変位センサ,コントローラ,電磁石用の電力増幅器自体,太陽電池の発電回路,余剰電力を充電する二次電池と,その充電回路,それら電力状態を監視するコントローラを搭載しており,これらも電力を消費する.そのためこれらを低消費電力とすることが重要となる.平成29年度までに,リニアモータによる自走機能を搭載した,搬送車の製作を行った.しかしながら予想以上に浮上時の消費電力が大きくなり,太陽電池の発電電力では浮上できなかった.これは太陽光を得るために,太陽電池を天井に配置しやすい,跨座式としたため,構造が複雑になり振動しやすく,減衰力を得るために多くの電力を消費してしまうためであった.そこで現在,新たに磁気浮上搬送装置を製作し直している.この搬送装置の自走機構は,リニアモータとした.これは非浮上時において自走の確認までを行ってい,これは電気学会の研究会にて発表を行った.また前年度に製作したモード制御を適用した予備実験装置は,それを学術論文としてまとめた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初,平成29年度では搬送車の製作を定置浮上の実現,屋外の照度環境での浮上の確認,自走方法の実装を行う予定であった.そのためまず,製作した搬送車の定置浮上を行った.制した搬送装置は,太陽光を効率よく太陽電池表面に与えるために,太陽電池を車体天井側面に配置し,跨座式のモノレールのような構造として,4つの電磁石ユニットを用いてい,鉛直及び水平面回転2軸を制御している.このように,電磁石の数が安定化する自由度よりも多い場合,ゼロパワー制御によって能動安定化できない.そのため,モード制御の適用や,ねじり剛性を低く設定する必要がある.製作した装置はねじり剛性を低く設定するような構造としたため,振動しやすく,それを減衰させるために予想以上に電力の消費が大きくなってしまった.そのため,製作した磁気浮上搬送装置では,太陽光発電電力のみでの浮上は困難となった.そこで現在磁気浮上搬送装置の再設計と製作を行っている.屋外の照度環境での浮上を実現するための装置を製作する予定であったが,この点は遅れている.自走方法の実装については,リニアモータの設計製作を行い,非浮上時において自走の確認までを行っている.
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は,引き続き搬送装置の浮上の確認と,自走機能の実装,屋外での照度環境での浮上の確認を行う予定である.そのため現在,つり下げ構造として磁気浮上搬送装置の再設計及び製作中である.これはつり下げ型の構造では,搬送車天井部分にレールがあるため,天井部分に太陽電池を設置することができない.そのため,搬送車側面に太陽電池を搭載し,また,旧装置よりも太陽電池の面積を増やすことと,発電効率の良い太陽電池に変更している.自走機能については本年度に製作したリニアモータを搭載し,屋外の照度環境での浮上確認をするため,当初の前年度までの計画のように,降雨降雪や風などの天候による外乱を受けないように,透明なカバーを取り付けられるようにする. また当初の計画では,定置での浮上の確認,屋外照度環境での浮上,自走機能の搭載の他,軌道の延長と無線による通信による自走,最終的には天候による外乱が加わっても浮上できるように考えていた.そのため,引き続きこれらを目標としている.
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次年度使用額が生じた理由 |
主な理由は,平成28年度に,研究費の大部分を製作費に充当する計画であったが,製作費が予想よりも安くなったため,予算の差異が生じた.そのため本年度への繰越額があったため.また出張旅費を計上したが,当研究経費以外の経費にて旅費を支出したためである.また,人件費については当初,学生アルバイトを使って実験をする予定であったが,その必要がなくなった事による.
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