本研究の計画は,太陽光発電技術と電磁石吸引型磁気浮上技術を応用し,屋外での照度環境によって24時間, 365日の浮上を目指す,完全非接触磁気浮上搬送列車の開発を行う.予定であった. 磁気浮上搬送装置は,搬送車側に電磁石など浮上や,軌道上での駆動に必要な機器を搭載する方法と,軌道上に電磁石を並べる方法に大別される.前者では,搬送車に電力供給を行う必要があるため,従来では一部接触を許す方法や,バッテリーを搭載して一時的にでも接触充電する必要があった.本研究では,磁気浮上,軌道上での駆動に必要な電力を磁気浮上搬送車側に搭載された太陽電池の発電電力により供給して,非接触状態を常に保つ,磁気浮上搬送装置の開発を行うことを目的としていた. これまでに本研究では,最小で200mW以下とこれまでにない低消費電力の搬送装置を製作し,外部からの電源供給無しで浮上に成功した.開発した搬送装置は,鉛直方向,水平面回転2軸の三自由度が能動制御されている.このような場合,3つの磁気浮上系を独立的に制御する方法と,検出された位置から,浮上体のそれぞれの軸に対する運動を演算して制御するモード制御に大別される.これら二つの方式の特長を試験するための装置も合わせて開発を行った. 与えられる照度の変動を少なくするため,搬送装置内には二次電池が搭載されている.この実験を行ったときには,まずこの二次電池を完全放電の状態から始め,磁気浮上を行いつつ,余剰電力を二次電池に充電し,太陽電池が発電できる十分な照度があたえられていない,暗い環境では二次電池に充電した電力を用いて,連続120時間ほどの浮上を実現できた. また搬送装置の駆動装置の開発を行ったが,搬送車を浮上しながら,駆動の両立には至っていない.
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