研究課題/領域番号 |
16K06154
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研究機関 | 北陸先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
浅野 文彦 北陸先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 准教授 (70415066)
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研究分担者 |
徳田 功 立命館大学, 理工学部, 教授 (00261389)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 滑り接触 / 移動ロボット / 劣駆動システム / 運動生成 / 動摩擦 / 歩行ロボット |
研究実績の概要 |
床面と滑り接触をしながら移動する劣駆動ロボットの運動生成と制御系設計に関して、平成28年度は主に以下の研究成果を得た。
半円形状をした本体フレームと揺動質量から構成される劣駆動移動ロボットの基礎研究を通して、次の成果を得た。揺動質量を高周波振動させることで本体フレームと床面との接触点(以下、接地点)に摺動が生じ、ほぼ一定の速度で緩斜面上の前進運動生成が可能となることが数値解析を通して示されている。この現象を実機実験により確認すべく、試作機と実験環境の改良を行った。スライダクランク機構を採用することで安定した揺動質量の正弦波振動を実現し、最終的に数値シミュレーションと同様の運動が生成されることを確認した。また、揺動質量の前後非対称運動に基づく水平面上における前進運動生成の基礎的検討も開始した。数値シミュレーションを通して、直動関節や早戻りリンク機構を利用して適切に揺動質量を制御することで、前進運動生成が可能となることを確認した。現在、その実機検証へ向けて試作機の設計開発を進めている。
上記の研究に並行して、支持脚接地点の摺動を伴う受動歩行運動についても解析を進めた。数学モデルに関しては、遊脚着地時に生じるインパルス的な動摩擦力の影響を考慮した非弾性衝突方程式の再構築を行った。受動歩行モデルとして4自由度のコンパス型2脚ロボットを考え、その数値シミュレーションによる運動解析を通して、3自由度受動歩行の基礎的特性(歩容の一意性、股関節粘性の必要性等)を明らかにした。また、半円形状をした足部の効果を利用することで、股関節粘性を用いなくても安定な3自由度受動歩行が実現可能となることを示した。更には、接地点の摺動を伴う場合にも安定な劣駆動2脚歩行運動を実現するための手法として、stealth walking(ステルス歩行)の概念を新たに提案し、その基礎的研究を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
摺動と揺動を利用した劣駆動移動ロボットに関しては、改良した試作機を用いた下り斜面上における運動生成実験を通して数値解析結果の妥当性確認までを行った。重心の推進機序については十分に理解が進んでいないが、解析に必要な数値シミュレータや実機検証システムの準備は全て整った。支持脚接地点の摺動を伴う歩行運動についても、3自由度受動歩行の数学モデルの再構築や特性解析を通して重要な知見が得られ、その過程で歩行制御に関する次なる課題(ステルス歩行)も明確になった。以上の理由から、進捗状況はおおむね順調であると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
摺動と揺動を利用した劣駆動移動ロボットの運動生成とその応用を目指して、次のように今後の研究を推進する。平成28年度は、下り斜面上での運動生成に関しては数値解析と実機実験の両面から考察し結果比較までを行ったが、水平面上への拡張については数値シミュレーションを通して基礎的な挙動を観察するに留まった。また、劣駆動移動ロボットのモデルは最小自由度のものを用いているものの、接地点における摺動特性の複雑さから、重心の推進機序に関する数学的理解が難航している。これを踏まえ平成29年度は、水平面上の効率的運動生成法を確立すべく、推進機序の定性的理解を目的とした運動解析を更に推進する。また、これに並行して実機検証システムの構築も行う。更には、伸縮と回転の2自由度をもつ揺動質量に関する考察も進め、運動特性(移動速度・移動効率・床反力)の変化傾向の解析を通して、揺動の最適目標軌道設計法を確立する上で必要な知識を整理する。
コンパス型2脚ロボットの安定な3自由度受動歩行の必要条件や運動特性については、数学モデルの再構築と数値解析を通して理解が深まった。平成29年度は、支持脚接地点の摺動を伴う劣駆動2脚歩行およびステルス歩行を中心に運動解析を行い、これに並行して、最適制御系設計法を確立すべく理論的研究を推進する。特に、ポイントフットの劣駆動歩行モデルが凍結路面上で歩行速度を最大化する制御系の実現を目指して、適切に設定した制御出力に対する最短時間制御の有効性、および結果として定まる性能の限界について考察する。
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次年度使用額が生じた理由 |
劣駆動移動ロボットの実機検証システムに改良を要する箇所が幾つか見付かったが、必要な作業工程を業者に外注することなく、研究室のCAD等を利用して自ら行った。この結果、物品費に幾らかの余裕が生じたものと思われる。
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次年度使用額の使用計画 |
水平面上の移動を目的とした新型劣駆動移動ロボットの実機検証システム構築のために使用する予定である。
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