研究課題/領域番号 |
16K06155
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
松村 雄一 岐阜大学, 工学部, 教授 (20315922)
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研究分担者 |
古屋 耕平 岐阜大学, 工学部, 助教 (40580056)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 機械力学・制御 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,パネル面の周期構造型メタマテリアル化により,音が放射されにくい形状へと固有モード形を最適化する設計法の確立である。この目的を達成するため,平成28年度の実施計画では,前半にWave Finite Element Method(WFEM)による波動伝播阻止帯域の計算法の準備と固有モード形の自在整形の実現を,後半にModal Acoustic Transfer Vector(MATV)に基づいて固有モード形と音響放射の関係を定式化し,音響放射が少ない固有モード形の理解を深めるとしていた。 このような目標に対する今年度の成果は,以下の(1),(2)のとおりである。 (1)WFEMの計算プログラムを整備し,どのような周期構造が固有モード形の自在整形に有用化に関するノウハウを蓄えた。また,このノウハウに基づいて,所望の形状の固有モード形をある程度自在に作成できた。例えば,コーナーモードやエッジモードなどと呼ばれる音響放射に寄与の大きな領域での固有モード形だけをあえて残して,残りの部分は周期構造型メタマテリアルで固有モード形が振幅を持たないようなパネルを設計したり,これらの固有モード形の両端が逆相になるように設計することで,このパネル面が設置された閉空間内の音響モードを逆相で励起して,音響モード同士が相殺するようにして内部空間の音圧を下げるなどの設計が可能であることを示した。 (2)MATVの定式化により,構造側の固有モード形のモードベクトルと,音場の音響感度ベクトルの直交性や,MATVとモード刺激係数の積の符号が重要である点に着目した。これらの調整に周期構造型メタマテリアルを利用することで,パネル面の各領域からの正負音圧の寄与の総和として計算される評価点音圧を低減する方策を整備した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究を進める上で基本となる解析法は,Wave Finite Element Method(WFEM)による波動伝播阻止帯域の計算法と,Modal Acoustic Transfer Vector(MATV)に基づく音響放射の計算法である。これらは,平成28年度の研究によって整備でき,これらの計算結果に基づく実施ノウハウも得られた。そこで,達成度は「おおむね順調に進展している。」とした。以下,達成度の詳細を示す。 まず,WFEMの整備状況の詳細について説明する。周期構造のユニットセルを切り出し,パネル面をシェル要素,周期構造をソリッド要素とすることで有限要素モデルを作成し,この質量行列と剛性行列からWFEMの理論に従って波動伝播阻止帯域を計算する手法を整備した。この計算結果は,論文等で紹介される計算結果と一致しており,計算プログラムの妥当性を確認済みである。このWFEMで,何種類かの周期構造の波動伝播阻止帯域を計算し,この結果とパネルの固有モード形や周波数応答関数を比較するなどして,波動伝播と振動応答の関係に関するノウハウを蓄えた。また,固有モード形の整形にも取り組み,いくつかの固有モード形を所望の形状で得られることを確認した。 次に,MATVの整備状況の詳細について説明する。MATVの定式化を確認して,構造側の固有モード形のモードベクトルと,音場の音響感度ベクトルの直交性や,MATVとモード刺激係数の積の符号が重要である点に着目した。この理解に基づき,周期構造型メタマテリアルの部分配置が,評価点音圧の低減に有効となる方策を閉鎖音場用に整備した。これにより,自由音場だけでなく,自動車の車室内のような閉空間でも有用な周期構造型メタマテリアル活用法を準備できた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は,これまでに整備した計算法と,得られたノウハウに基づいて所望の音圧低減を実現するパネル面構造を実際に設計し,構造-音響連成を考慮した有限要素解析により,その有用性を検証することから始める。この数値解析により妥当性が証明された後,実機を製作して実証を進めると共に,音響放射効率など,評価点音圧低減のための指標を目的関数とした周期構造型メタマテリアル最適化手法の確立を目指す。 具体的には,複数の帯域で同時に音圧を低減するような最適化を目指す。固有モード形の設計の際に,固有振動数も最適化の対象に含めることで,閉空間の音響モードの固有振動数と固有モード形に応じて,構造側の固有振動数や固有モード形が所望の値となるように構造を最適化することで,複数の帯域で音圧を低減し,広帯域な低騒音化を実現する ことを目指す予定である。 この準備として,研究分担者の古屋は最適化手法の開発に取り組んでいる。まず,周期構造の高さを連続的に変化させることで最適化手法を導入しやすくするなど,いくつかのテクニックを導入する。これにより,周期構造の最適化に基づいた固有モード形の整形と,この整形の結果として得られる評価点音圧低減を実現する。 このように,研究分担者の最適化手法に関する経験と知識を盛り込んで,本研究を推進していく予定である。
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