研究課題/領域番号 |
16K06157
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
石田 秀士 大阪大学, 基礎工学研究科, 助教 (80283737)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 振動 / 最適化 / 時間平均量 / ノンパラメトリック / 熱対流 / ブシネ方程式系 |
研究実績の概要 |
今年度は当初の予定通り,左右壁面温度差を固定した正方容器内の二次元熱対流場について,時間平均熱伝達率を最大・最小化する最適振動分布をノンパラメトリックに求めることに成功した.昨年度までに左壁面熱流束固定,右壁面温度固定の条件下で最適化を行っており,本年度この結果をポルトガルで開催されたopt2017で発表したが,計算アルゴリズム自体はこれとほぼ同じである.しかしながら今年度は最適結果の評価を工夫することで,2次元空間上の格子分割数を増大させた場合に,最適値・最適分布の収束性を得ることに初めて成功したことと,この得られた分布が実際に時間平均量を最適化し,この最適値が理論的・数値的に予測される結果と一致することを確認することができたことが,昨年度と異なる顕著な業績としてあげられる.従って本研究により格子分割数によらないブシネ方程式系の特性として,真に最適解が得られたと判断でき,これらの結果を日本機械学会関西支部で発表した.さらにこの改良されたアルゴリズムを昨年度までに行っていた左壁面熱流束一定条件に適用して,左壁面剪断応力の最小化,ならびに左壁面平均温度の最小化問題を解いた結果,最適化された振動熱対流場と内部重力波共鳴時の熱対流場に相関が見られた.本研究で用いた理論は安定定常解周りの任意の偏微分・常微分方程式系に適用できるため,今年度得られた結果の意義は極めて大きいと考えられる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究の最適化理論を連続体の偏微分方程式系に適用するにあたり,本研究のような差分法でも格子分割数を大きくした場合に収束特性を得ることができるということは当初想定していなかった.計算理論を修正することで,今年度連続体に対する適用に見通しが立ったことは今後の研究の進展にとって極めて大きいと言える.
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今後の研究の推進方策 |
今後本格的に本研究の成果を利用して実用計算を行っていくにあたり,計算処理速度をあげるための並列化計算プログラムの開発や,常微分方程式系の低次元化・粗視化が不可避となる.情報収集を進めながら,さらに新しい計算アルゴリズム・計算理論を開発していく予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
PCクラスタ型計算機で定評があり,当初そこから購入を予定していたメーカーに本研究で使用するプログラムを用いた計算速度の検討を依頼した結果,単独CPU(CORE)での数値計算では,むしろ最近のCPU,intel fortranの組み合わせでは10年前のものに比べ,計算速度が低下することが確認できた.従って当初の予定通り,計算プログラムを変更せずに,新たに計算機を導入した場合は,今後の研究に支障が出ることが想定されたので購入を取りやめた.一方いくつかの大学の大型計算機を用いて,基本的な並列計算プログラム(本研究のものとは異なる)による計算時間の比較を行ったところ,うまくプログラムを組めば計算時間を大幅に削減できることが確認できた.従って今後は当初予定していたPCクラスタ型計算機の購入にはこだわらず,グループユースでの大型計算機の利用も含め,柔軟に対応することで当初の目標を達成すべく努力する.
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