研究課題/領域番号 |
16K06159
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
日野 順市 徳島大学, 大学院理工学研究部, 教授 (10173189)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | モード解析 / 伝達経路解析 / 加振力推定 / 時間領域推定 / 非定常入力 |
研究実績の概要 |
加振入力の推定について,正則化手法を用いた直接的な手法およびカルマンフィルタによる間接的な手法について検討している。 両者とも過渡的な入力としてインパルス力を推定することを目的として研究を進めている。振動応答としては,現実の計測でよく用いられる加速度計を想定して,加速度応答を用いる手法について開発を進めている。前者は逆システムを求めるための特異値分解を実行する際にTikhonovの正則化パラメータを決定する指標としてL曲線法を利用した。推定入力ノルムと応答の推定値と観測値の誤差ノルムから求めたL曲線のコーナー部分の曲率から正則化パラメータを決定した.この正則化パラメータを閾値として採用特異値の大きさを決定することにより,入力推定の精度が向上した.シミュレーションおよび研究室内のモデル実験においても確認することができた。後者は通常のカルマンフィルタの状態量である変位および速度に加えて加振力を含める拡大システムを構成することで入力推定に適用した。これによりオンラインで入力推定が可能になる。測定データのサンプリングを十分に高速に行う必要があるため,シミュレーションにおいてはほぼ満足のゆく結果を得ることができているが,研究室内のモデル実験では精度が十分ではない。これらは,平成28年9月に開催された日本機械学会年次大会において発表を行った。 また,本研究の主目的は非定常入力の推定であるが,手法の妥当性の確認の観点から,定常な調和入力の推定も実施しているが,こちらについては問題なく推定が可能となっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定では,正則化手法を用いた直接的な推定手法については,逆システムの構築のための正則化法として,Tikhonovの正則化において,推定入力と出力の誤差ノルムを用いたL曲線法を利用して正則化パラメータの決定を行うものとしていた。これについては,前述のとおりほぼ満足のゆく結果が得られている。元々はL曲線法は作図されたグラフから定性的に最適点を決定していたが,曲率を利用することで定量的な評価が可能になり,自動的に最適点が決定できるようになった。シミュレーションによる確認の後,実験において多自由度モデル適用したが,インパルスハンマによる実際の入力信号の波形を加速度計の振動応答から推定することが可能になっている。加えて,平成29年度に行う予定であった定常信号である正弦波の同定も可能であることが確認できた。 しかしながら,カルマンフィルタによる間接的な推定手法については,計画に記述した問題であるトレンドの発生等は,加速度応答を利用することでほぼ発生しておらずシミュレーションでは十分な推定値を得ることができている。しかし,実験モデルにおいては実現問題を解いて求めたシステム行列を用いたシステムモデルを適用することで,精度の向上を見込んでいたが,実際には理論値を用いたシステムモデルを用いた方が比較的良い推定ができたが,十分な精度が得られたとは言えない状況である。対象モデルに含まれる固有振動数に比較して,データを取得する際に必要となる高速なサンプリングも実際の計測では問題になっている。 上述の通り,直接的な推定手法は当初の予定よりも順調に進展している。一方,間接的な推定手法については,シミュレーションは予定通りであるが,実験モデルについては進捗がやや送れていると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
直接的推定手法については,当初予定のTikhonovの正則化の次数の決定等については,プログラム中の数式を変更することで行えるので,問題無く進められると考えている。現在は0次の正則化を行っているが,1次以上のものに変更することが考えられるが,前年の検討準備の状況からは,効果はそれほど期待できないように思われる。現在は,推定対象の自由度の増加,はりおよび平板等の連続体への適用が必要であると考えており,固有モードの利用等の手法の拡張が必要であると考えている。これは,実機への適用の際には必要になるものと考えられるので,こちらを優先して行って行きたい。また,確認のために有限要素法による数式モデルを用いたシミュレーションについても行い,推定精度の確認を行うものとする。さらに,モデルの自由度が増加する際に直接的手法では計算コスト,特にメモリ容量の問題があり,実用的に計算が困難になる問題も発生している。この解決についても検討したい。 直接的推定手法については,当初は部分空間法による離散時間系システム行列を決定するものとしていた。これは,前年に問題になった,実験モデルでの推定が不十分であったことに対応して,加速度応答信号のみからのシステム同定についての手法の推定精度の改善を行う。また,カルマンフィルタを拡大系に拡張しているが,拡大系の作成手法についても再検討が必要である。データ取得のためのサンプリング時間が高速になる問題についても,システムに含まれる固有振動数成分に比較して妥当なサンプリング時間の検討を行いたい。
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