研究課題/領域番号 |
16K06161
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研究機関 | 成蹊大学 |
研究代表者 |
岩本 宏之 成蹊大学, 理工学部, 准教授 (90404938)
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研究分担者 |
田中 信雄 首都大学東京, システムデザイン研究科, 名誉教授 (70305423)
西郷 宗玄 東洋大学, 工業技術研究所, 客員研究員 (80357053)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 波動制御 / エネルギトラッピング制御 / 波動フィルタ / 連成系 |
研究実績の概要 |
近年,構造問題を振動モードではなく波動の観点から制御する試みに注目が集まっている.当該手法に,ある領域に流入する波動を遮断することで無振動状態の生成が可能である.一方で,非制御領域において新たな共振現象が発生してしまう.そこで,本研究課題においては,機械システム内を伝播する外乱波動を能動制御によって誘導し,トラッピングすることで,無振動領域の生成と非制御領域における新たな共振の回避を同時に達成する手法の確立を目的とする.今年度は柔軟構造物におけるエネルギトラッピング制御の確立と,弦の回転運動を考慮した弦・平板連成系の理論モデリングについて検討を行った.詳細は以下の通りである. (1)柔軟構造物のエネルギとラッピング制御 波動フィルタリング法によって得られた波動振幅をフィードバック信号とする波動弁(一方向のみに波動が伝播する制御系)を対向させることで構造物中を伝播する外乱エネルギを捕獲する手法について検討を行った.理論的な枠組みは確立したが,伝達マトリクス法が持つ数値的不安定性(エバネセント波に起因)によって,数値解析による実証ができなかった. (2)弦の回転運動を考慮した弦・平板連成系の理論モデリング 弦・平板連成系の精緻な理論モデルの構築を志向し,弦の回転運動を考慮したモデルについて検討した.具体的には,弦の水平振動が平板にトルクとして外乱を与えると考え,弦と平板の間に剛体の結合ブロックを挿入し,その先端に弦がばね結合するモデルを構築した.数値解析を行ったところ,物理的に妥当な結果が得られた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
実績の概要の欄に記載したが,エネルギトラッピング制御の確立に至ることができなかった.当該手法の基礎となる波動弁については,既にその有用性を数値解析の立場から明らかにしているが,これを対向させたエネルギトラッピング制御の数値解析は成功しなかった.原因としては,伝達マトリクスが持つ数値的不安定性が挙げられる.柔軟構造物の曲げ振動にはエバネセント波が存在する.これは実指数関数によって記述される波動項であり,わずかな数値誤差が大きな演算結果の誤差につながる. 今年度のもう一つの課題であった弦・平板連成系のモデリングについては成功したことから今年度の評価区分を「やや遅れている」とした.
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今後の研究の推進方策 |
伝達マトリクス法が持つ数値的不安定性によって,エネルギトラッピング制御の数値解析が失敗に終わったことは既に述べた.そこで,研究計画の変更と期間の延長(1年)を行った.具体的には,柔軟構造物を集中定数系によってモデリングし,当該モデルを対象とするエネルギトラッピング制御の確立を目指す.当該モデルにおいては数値的不安定性の要因となるエバネセント波は存在しないことから,良好な結果が得られることが期待できる.また,構造解析に広く用いられる有限要素法との親和性が高いことから,伝達マトリクス法を基調とした場合と比較すると,より一般的な手法を確立できる可能性がある.
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次年度使用額が生じた理由 |
前述の通り,当該年度においてエネルギトラッピング制御を確立することができなかった.これを受け,研究計画の変更と期間の延長(1年)を行った.そのため,次年度使用額を残した次第である.予定としては,制御実験に用いる連成系の試作と研究発表に係る旅費などに支出する.
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