研究課題/領域番号 |
16K06162
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
林 隆三 東京理科大学, 工学部機械工学科, 講師 (80505868)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 交通機械制御 / 自動車 / 予防安全 / 自動運転 |
研究実績の概要 |
本年度はまず,前年度の検討結果に基づき,死角からの歩行者の飛び出しに対する最高安全速度の導出を行った.その結果,歩行者の飛び出しに対しては,死角を作っている端点において最も最高安全速度が低くなるようなものとして最高安全速度が導出された. 次に,導出された「最高安全速度」を順守させる車両制御手法について検討した.ポテンシャルフィールド法を用いた方法とダイナミック・ウインドウ・アプローチを用いた方法の2種類を検討した.ポテンシャルフィールド法を用いた方法では,歩行者や死角の端点および道路境界を斥力源として定義し,車両に対してこれらから斥力が発生しているかのように車両を振舞わせるよう自動操舵を行うものとした.ポテンシャル関数のパラメータは遺伝的アルゴリズムを用いることにより適切な値が得られることを確認した.ダイナミック・ウインドウ・アプローチでは,歩行者や道路境界からなるべく遠いほうが,そして,車速は最高安全速度超過しない範囲で高いほうが良くなるような評価関数を設定した.提案した2種類の方法について数値シミュレーションにより有効性の検証を行った結果,いずれの手法においても最高安全速度を順守可能しながら歩行者の追い越しや死角の通過を行うことが可能であることが確認できたが,ダイナミック・ウインドウ・アプローチの方が良い結果が得られた. ハードウェア開発に関しては,実験準備のためのシミュレーションを行うため,実験車両の車両動特性の同定を行った.実験車両を用いて定常円旋回試験及びスラローム試験を行うことにより,車両のスタビリティ・ファクタや前後輪のコーナリング・スティフネスが同定され,実験車両を用いた場合の車両挙動シミュレーションを行うことが可能になった.また,最終検証実験に必要なセンサの選定と購入を行い,取り付け方の検討を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
死角からの歩行者の飛び出しに対する最高安全速度が導出され,これにより,単一の潜在リスクに対する最高安全速度はすべて求解できたといえる.しかしながら,潜在リスクが重畳する場面については検討するに至っていないため,これについては次年度の課題とする. また,ハードウェアに関しては,当初実験に使用することを予定していた車両では制御面の問題で実験ができないことが判明し,新規の実験車両とセンサを用意することとしたため,車両モデルパラメータの同定やセンサの選定等に時間を要し,それにより,実験車両としての完成には至っていない.完成は次年度に持ち越しとなったが,次年度中に完成させて実験を行うことは可能であると考えている. なお,実験車両を用いた実験は学内で行うことが不可能であることが判明し,実験のための走行路や試験場までの車両と機材の搬送方法についての調査に時間を要したことも,進捗遅れの大きな原因である.
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画に則り,次年度は実験車両を用いた実証実験を行うことを目標とする.まずは実験車両にセンサ類を取り付けて歩行者や死角等をセンシング可能にし,実験車両を完成させる.規範危険予測運転モデルとしては,計算負荷を考慮し,ポテンシャルフィールド法を用いたものを使用する予定である.ポテンシャルフィールド法を用いた車両制御アルゴリズムを実験車両に実装し,歩行者追い越し実験や死角のある交差点通過実験を行い,提案するアルゴリズムの有効性を評価する.
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次年度使用額が生じた理由 |
実験車両の変更に伴うセンサ等の再選定および参加予定学会の変更により若干の余剰金が生じている. 余剰金は次年度に予定している消耗品の購入に充てる予定である.
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