研究課題/領域番号 |
16K06166
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研究機関 | 南山大学 |
研究代表者 |
中島 明 南山大学, 理工学部, 准教授 (70377836)
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研究期間 (年度) |
2016-10-21 – 2019-03-31
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キーワード | 多指ハンドロボット / 非ホロノミック系 / 拘束の切り替え |
研究実績の概要 |
1つ目の研究成果としては,技巧的動作の一つである多指ハンドによる把持・操り系の制御において,転がり運動の非ホロノミック性を利用した把持物体の運動計画法を開発した.具体的には,接触座標(局所座標)の非ホロノミック系に関する閉軌道により生じる変動量(ホロノミー)を用いた運動計画において,(1)接触座標(指側,対象物側)の制限,多指ハンドの関節の制限などを制約条件として定式化し,(2)把持物体の配位座標への座標変換の導入を行なった.これらポイントにおいて,把持・操り系における仮想的な閉リンク機構の幾何学的拘束条件が基礎となっている.これにより,2指ハンドによる把持・操り系において,従来の手法では不可能な物体を360度回転するなどといった広範囲の操り運動を実現した. 2つ目の研究成果としては,双腕型多指ハンドロボットによる人間の動作解析に基づいた折り紙における紙のめくり上げ動作の実現を行なった.人間の技巧的動作の一つである折り紙においては,接触・非接触(衝突)による運動拘束の遷移が多数発生する.この拘束の遷移を計測した人間の指先動作から確率モデルの一種である隠れマルコフモデルに基づき抽出することで,指先位置の軌道データに遷移情報を埋め込む手法を開発した.またその情報に基づき,ロボットと人間の異構造性を考慮した非線形計画法により目標軌道を算出した.さらに軌道に基づいた位置制御・力制御の切り替え制御則を導出し,実験においてめくり上げ動作を実現した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
非ホロノミック性を利用した動作計画,衝突現象の切り替えなどといった基礎的な理論整備については十分な成果が得られた.しかしながら,これらの成果に基づき衝突現象を伴う技巧的動作に対する非ホロノミック系としての制御則の開発までには至っていないためである.
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今後の研究の推進方策 |
進捗状況にて述べたように,H28年度に得られた成果をもとにして,衝突現象を伴う技巧的動作に対する非ホロノミック系としての制御則の開発を推し進めていく.衝突現象を伴う技巧的動作の具体例として,卓球におけるラリーに加えて,デビルスティックといった複数の動作のモデル化を同時に進めていく.そのモデルの可制御構造の解析を行うことで,制御系設計のさらなる推進を図っていく.
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究課題は当初のH28年度4月においては一旦不採択となり,その後に追加採択となったため交付時期が10月末となった.そのため,4月不採択の際に研究遂行のために他の研究助成金を申請および取得していたため,交付を受けた10月においては既にH28年度について資金を使用する用途がなくなっていたため,より効率的に研究を推進するために次年度への繰越金とすることにした.
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次年度使用額の使用計画 |
人間の技巧的動作の計測および実験における計測・フィードバックのため,高精度なモーションキャプチャシステムおよび処理用の計算機を購入予定である.
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