車両などが衝撃を受けた瞬間に構成する素材に超音波振動を加えることで、変形抵抗を低下させ、衝撃吸収度を向上させる方法を考案した。前年度までの研究では、直径 40 mmの小型化した超音波振動子を用いて、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)や高張力鋼鈑に超音波を印加し、衝撃力の低減効果などを確かめている。 平成30年度は実験装置を改良し、頭部インパクタ(ダミーヘッド)を落下させる頭部損傷値の測定や衝撃印加による変形試料の観察を行った。また、超音波振動子の振動特性も測定した。平成29年度にも頭部損傷値の測定を試みたが、頭部損傷値の値にばらつきが多く、超音波振動の効果は確かめられなかった。そこで、頭部インパクタを設置するスライドガイドを1本から2本に変えるなど、実験装置の剛性を高めるとともに、超音波振動子の性能を向上させるために、ボルト締めランジュバン型振動子と振動拡大用ホーンとの接合面にラップ加工を施すなどの対策をした。しかし、頭部損傷値の値には超音波振動の影響で常に大きなノイズが重畳されて、正確な測定ができなかった。頭部インパクタに超音波振動が伝播しないように実験装置を分離するなどの対策が必要である。超音波振動の印加によって変形試料の変形量は若干増加した。超音波振動が十分変形試料に伝われば、頭部損傷値も低減すると推測する。 これまでの研究では超音波振動によって衝撃の瞬間的な衝撃力を低減することは示されているが、衝撃エネルギーが吸収されることはまだ明確に示せていない。衝撃エネルギーが吸収されること示すためには衝撃力と変形量の推移を同時に測定する必要がある。そこで、平成30年度は小型のコンピュータ Raspberry Piを用いて各種センサーからの出力から値を読み込み、グラフとして描画するシステムを作成した。
|