研究課題/領域番号 |
16K06171
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研究機関 | 室蘭工業大学 |
研究代表者 |
花島 直彦 室蘭工業大学, 工学研究科, 教授 (40261383)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 湿原環境 / 移動ロボット / 二重螺旋移動機構 / 不整地 / 静的歩行 / 正規化安定余裕 / 傾斜地 / 動力学シミュレーション |
研究実績の概要 |
本研究は、湿原環境におけるフィールド調査を支援するロボットの移動機構として有望な二重螺旋移動機構の開発を目標としている。このうち当研究課題の目的は、二重螺旋移動機構においてロボットの本体を支える(a)門型脚の開発と(b)移動機構の実現、そして二重螺旋移動機構における(c)理論的、(d)実証的な解析を行い、新たな知見を得ることである。この目標を達成するための、3年計画の初年度においては(a)と(c)に取り組む計画であった。すなわち、 (a)については門型脚の設計と2台の製作を行い開発中の試作機に組み込むこと、(c)については運動学と静力学的な観点から当機構の特徴を解析することと、安定な歩行移動を実現するための歩容生成手法について考案することである。 まず、(a)に関する研究成果であるが、門型脚の回転・開閉機構を2台製作し、試作機にこれを組み込むことができた。設計仕様としていた出力トルクや開閉力を発生できることも確認した。一方で、設計に時間を要したため、門型脚のグリッパ機構の開発については完了していない。次に(c)については、運動学および逆運動学の式を導出し、さらに安定余裕を考慮した歩容生成法を考案し、動力学シミュレータを用いた解析を行った。これにより、地面の傾きが進行方向に向かって5度以下、これと垂直な向きへは最大で20度程度までの範囲で、安定な歩行が可能であることを示すことができた。 (a)に関する研究成果により、門型脚が設計仕様を満足するための機構構成、部品選定などについて知見を得ることができた。また、研究期間3年目に予定している実証実験に向けた準備を進めることができた。 (c)の研究成果により、二重螺旋移動機構の制御に必要な運動学を明らかにでき、提案した歩容生成法を用いて安定歩行できる地面の傾斜角の範囲について知見を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要に記載した通り、平成28年度の実施計画では、(a)門型脚の開発、(c)二重螺旋移動機構における理論的解析を行う予定であった。(a)については門型脚を設計し、2台の製作を行って試作機に組み込み、出力トルクや開閉力の発生が設計仕様どおりであることを確認した。門型脚先端のグリッパ機構の開発については完了していないが、平成29年度中に完了する見込みである。 (c)については、運動学および逆運動学の解析を行い、それに基づき安定余裕を考慮した歩容生成法を考案した。さらに、動力学シミュレータを用いて傾斜地における歩行動作の解析も行った。 なお、動力学シミュレーションによる解析は、当初は平成29年度の計画としていた。そのうち、螺旋パイプの動力学モデルの作成、螺旋パイプと移動機構を合わせた全体での動力学シミュレーションの実現、安定歩行動作の解析、地面の傾きの影響については、先行して実施できた。 (a)において未完了の部分もあるが、(c)について計画以上に進展しているため、両者を総合して、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は、研究実績の概要に記載した目的のうち、(b) 移動機構の実現と(c)二重螺旋移動機構における理論的な解析を進める。このうち(c)の一部は、平成28年度に先行して着手した。平成29年度は、これを発展させ、移動ロボットを初期地点から目標地点に誘導するための動作計画について検討する。提案する二重螺旋移動機構は、脚の着地点を螺旋パイプ上に置かなければならず、可到達領域が離散的になることが知られている。このような制限下で、動作計画にどのような自由度が許されるのかを中心に考察を行い、動力学シミュレーションなどで検証を進める。 (b)については、平成28年度で完了できなかったグリッパの設計と製作を行い、試作機に組み込むとともに、試作機の制御装置を含めた実験装置全体のシステム統合を進める。試作機のモータを制御するサーボコントローラと、運動学計算や安定歩容生成などを行うパソコンをネットワークで接続し、パソコンからの指示で計測制御ができるように構成する。 平成30年度は、研究実績の概要に記載した目的の (d)二重螺旋移動機構における実証的な解析を実施する。平成29年度に構成した実験装置に、落下防止装置などの安全対策を施した上で、バランス制御や歩行制御などの実験を行う。実験データを解析し、提案する二重螺旋移動機構の実現可能性を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究実績の概要に記載した通り、平成28年度は門型脚を製作し、試作機に組み込み、出力トルクや開閉力の発生が設計仕様どおりであることを確認した。しかしながら、試作時に設計の不具合が見つかり再設計を行なったため、 門型脚先端のグリッパ機構の開発については完了しなかった。この部分を、次年度である平成29年度に実施するため、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
翌年度分として請求した助成金の直接経費は150万円であり、これに比べると次年度使用額は29,953円と少額であるため、当初の使用計画に大きな変更はない。すなわち、動力学シミュレーション環境を改善するために計算機を更新し、試作機により制御実験ができるように制御装置などを購入する。これらに120万円程度を当てる。また、成果発表の旅費に20万円、人件費・謝金に5万円、その他に5万円を支出する計画である。
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