前年度までに開発した試作ロボットおよび環境適応推進手法の成果を基に,研究計画で予定していた通りに扁形ロボットの作業機能と産業応用への展開を検討した. まず扁形ロボットの作業機能についてであるが,大自由度を有する扁形ロボットの場合の把持と繰り動作についてシミュレーションを行った.この場合は,従来のロボットハンドのように物体の形状に合わせ,ロボットの各関節を位置制御することにより把持と繰り動作を実現できることが確認できた.また触角センサによる情報を用いることにより,側抑制の原理を導入して物体を包み込むような動作を実現できた.ただ触覚センサによるフィードバック制御次第では把持が不安定になる状態があることも確認できたので,確実で安定な包み込み把持を実現するためには,今後も従来のロボットハンドの研究で行われている議論が必要である. 次に予定していた扁形ロボットの産業応用への展開であるが,床下点検や配管検査などのインフラ点検への応用を視野に入れた狭隘環境での探査を模擬した実験を行った.実験の内容としてブロックや木材などで擬似的な狭隘環境を作り出し,操縦者がロボットの動作を直接観察しながら扁形ロボットをジョイスティックで操縦する内容である.これにより,開発したロボットが持つ機構的な移動性能が応用展開への可能性を有しているか確かめようとした.実験では操縦者の試行錯誤しながらの操縦によるものではあるが,扁形ロボット自身の機体高さより低い凹凸のある路面条件においては路面を踏破できることを確認した.実際に産業に応用するには,より自律的な動作の検討や遠隔操縦システムなどのインターフェイスの充実を図る必要があるが,移動機能としては予想した能力を有していると判断できる結果であった.
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