研究課題/領域番号 |
16K06179
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
山田 貴孝 岐阜大学, 工学部, 教授 (00273318)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ロボット / 多指ハンド / 把握系の安定性 / 接触状態の同定 / 遠隔作業支援 / 組立作業 |
研究実績の概要 |
ロボットハンドは多様な形状を把持できる.しかし,安定性を考慮した把持を行うには,最適把持位置の生成が重要である.デプスカメラで3次元点群を取得し,2次元把持位置の生成とロボットハンドによる把持を行った.また,3Dモデルを生成し,探索に適した対象物形状のデータ点群を生成することで,実際の物体に対する3次元最適把持位置を生成した. これまで人間が行ってきた高度な作業を,ロボット支援により行うには,人間が持つ手先の器用さの実現が必要である.特に,組立作業などの複雑な作業を支援するには,接触状態の検出と制御が不可欠である.そこで,本研究では,ロボットアームのセンシング動作を模擬する装置を構築した.そして,多指ハンドの各指先のセンサを用いて,把持対象物と外部環境との接触状態を同定する問題を扱った. 従来のマスタ・スレーブ装置は比較的に設置や取り扱いが煩雑である.そこで,本研究では,ロボット用サーボモータを用いた4指12自由度ハンドで構成された簡易型のマスタ・スレーブを構築した.制御システムを構築し,その特性を評価した.さらに,指先に装着した6軸力センサを用いて,接触パラメタを推定した. 従来研究で構築された簡易型マスタ・スレーブシステムの制御方法を改良した.また,組立作業などの実作業が行えるようにロボットアームを追加し,ジョイスティックを用いたロボットアームの操作システムを構築した.さらに,遠隔地にカメラを設置し,力情報を視覚的にも確認できるように視覚提示を行った.そして,指先に装着した6軸力センサを用いて,接触点位置の推定を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
実際に把持することで物体の3次元点群を取得する方法および2次元最適把持探索の妥当性を確認した.また,3Dモデルから探索に適した対象物形状のデータ点群を生成し,2次元把持探索の結果と比較することで3次元最適把持探索の妥当性を確認した.結果として3次元把持探索の方が安定した把持を見つけることができた.立方体のほかに球体,円柱,三角柱についても扱い,同様の結果を得た. 把持対象物と外部環境との接触状態の同定について,指先のセンサを用いて実験を行い,同定が行えることを示した.指先のセンサを用いることで,把持対象物との接触や,把持対象物と外部環境との接触状態を同時に同定できる可能性があり,ロボットによる器用な操りに繋がると考えられる. 2組の4指12自由度ハンドを用いてマスタ・スレーブシステムを構築した.サーボモータを利用した簡易なシステムであること,6軸力センサを用いているため,指先が接触したか否かだけでなく,どの位置に接触したか,どのような状態で接触したかを検出することが可能である.しかし,サーボモータの特性のため,サンプリング間隔が10ms程度を要する.また,マスタとスレーブの間の位置誤差と力誤差の低減などの解決すべき課題も明らかになった. 従来研究で構築された簡易型マスタ・スレーブシステムにPI制御を導入した.これにより,力ノイズを低減することができた.組立作業などの実作業を行うために,ジョイスティックを用いたロボットアームの操作システムを構築した.また,力覚提示と並行して視覚提示を導入したことにより,力情報を視覚的にも確認できるようになり,さらに操作がし易くなった.6軸力センサを使用することにより,接触の有無だけではなく,接触点位置や接触の種類を検出することが可能となる.問題点として,把持したボルトをアームで運搬するとき,アームの振動でボルトが落ちてしまうことがあった.
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今後の研究の推進方策 |
PCL(Point Cloud Library)や曲面フィッティングなどを用いた精密な3次元座標の取得やロボットハンド可動域を考慮した探索アルゴリズムの改善,形状に対する最適な指の数の導出,任意形状の対象物への対応,探索時間の短縮,指リンクの考慮,最適把持をロボットハンドを用いて実際に検証すること,等が挙げられる. 接触状態の検出を単純化するために対象物やセンシング方法などについて限定された条件下で実験を行ったが,今後はより実践的な条件下での実験を行っていく.また,把持対象物の形状による判別精度への影響を理論的に補強することが今後の課題として挙げられる.その上で指先と対象物の接触状態を考慮したセンシング方策などを検討する必要がある. 簡易型マスタ・スレーブシステムの特性を考慮して制御手法を改良する必要がある.また,人間型5指を用いたHIROとの連携,4指と5指の指先位置マッピングによる変換,組立作業の遠隔操作,遠隔操作をしながら接触状態を同定すること,等が挙げられる. 簡易型ハンドは4本の指を90度間隔に配置している.対向する2指が2組存在することになるため,様々な作業を行うという観点からは都合が良い.しかし,人間にとっては操作し難いため,指配置を変更し,操作性を改善する必要がある.構築したシステムではジョイスティックを用いてロボットアームを操作しているが,より直感的な操作方法を構築する必要がある.また,作業中にロボットアームに外力が加わったときには力覚または視覚の提示をし,操作性を高める必要がある.
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究課題の実用化を目指して,平成28年度は次のことを研究実施計画よりも先に行った.(1)デプスカメラで3次元点群を取得し,2次元把持位置の生成とロボットハンドによる把持を行った.また,3Dモデルを生成し,探索に適した対象物形状のデータ点群を生成することで,実際の物体に対する3次元最適把持位置を生成した.(2)多指ハンドの各指先のセンサを用いて,把持対象物と外部環境との接触状態を同定する問題を扱った.(3)ロボット用サーボモータを用いた4指12自由度ハンドで構成された簡易型のマスタ・スレーブを構築した.(4)簡易型マスタ・スレーブシステムの制御方法を改良した.また,組立作業などの実作業が行えるようにロボットアームを追加し,ジョイスティックを用いたロボットアームの操作システムを構築した.(5)ロボットによる操作支援を目指して,簡易型ハンドとVRを用いたマスタ・スレーブシステムを構築した.
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次年度使用額の使用計画 |
二次元把持について回転関節の把持の剛性行列を基に,誤差解析を行い.把持パラメタの変動による安定性への効果を明らかにする.増減の程度,効果の生じる方向など,その特徴を明らかにする.三次元把持について,剛性行列の導出を整理し,より扱いやすい形にまとめる.そして,回転関節で構成される場合について力ベクトルと剛性行列を導出する.剛体同士の接触を緩和し,指先と対象物表面の弾性についてその影響を解析する.
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