研究課題/領域番号 |
16K06182
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
浦久保 孝光 神戸大学, システム情報学研究科, 准教授 (10335424)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ロボティクス / 特異姿勢 |
研究実績の概要 |
平成28年度においては,2リンクアームを搭載したモバイルマニピュレータ,3リンク平面冗長マニピュレータ,3次元ロボットマニピュレータなどの多自由度ロボットマニピュレータを対象に,重量物運搬動作における特異姿勢の有用性を数値シミュレーション,運動方程式にもとづく理論解析,実機実験によって調べた. これらの対象ロボットは,それぞれ異なる運動の自由度を持っている.従来研究では,2リンクアームの特異姿勢のみを扱ってきたが,それぞれの対象ロボットの特異姿勢を調べることで,一般の多自由度ロボットにおける特異姿勢の動力学的性質解明へとつながるものである.平成28年度の研究結果によれば,これらの多自由度ロボットにおいても,重量物運搬などのダイナミック動作に有用な特異姿勢の動力学的性質が確認された. とくに,ロボットベースが並進移動する自由度を持つモバイルマニピュレータについては,実機実験によっても特異姿勢の有用性が確認された.質量6kg程度のモバイルマニピュレータでも,特異姿勢を通過する動作によって,質量30kgの重量物を引き摺りながら移動させることができる.さらに,このとき生じる引っ張り力は,運動方程式にもとづく理論解析によって明らかとなった. また,3リンク平面冗長マニピュレータ,3次元ロボットマニピュレータに対する解析によって,多様な特異姿勢の利用方法が明らかになりつつある.2リンクアームで見られた特異姿勢の有用性はあるものの,増えた自由度を活かした運動との組み合わせによって省エネルギ動作を実現する場合が見られる. モバイルマニピュレータについての数値シミュレーションや理論解析の結果は,学術雑誌および国際会議において論文発表をおこなった.さらに,実験結果や他のロボットの結果についても,国内会議での発表を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
多自由度化したいくつかのロボットに対して,数値シミュレーション,理論解析,実機実験が進んでおり,研究は順調に進展していると言える.とくに,モバイルマニピュレータに対しては,数値シミュレーションや理論解析に整合する実験結果が得られており,特異姿勢の動力学的性質とその利用法を確認できた. また,他のロボットに対しては,従来研究から予想される結果とともに,多自由度化に伴ういくつかの予期しない動作も数値シミュレーションによって得られている.これにより,多自由度ロボットの特異姿勢における多面的な動力学的性質の解明に向けて,貴重な知見が得られつつある.
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度に得られたいくつかのロボットでの数値シミュレーション結果にもとづき,多自由度ロボットにおける特異姿勢の多様な利用方法を整理していく.とくに,ロボットが冗長な自由度を持つ場合には,冗長性に伴う力学的性質と特異姿勢付近での力学的性質を組み合わせて,効率的なダイナミック動作を行える可能性がある.これに対する理論解析を進めることで,特異姿勢の動力学的性質がより一層明らかとなり,その実用的な利用法確立へとつながると考えられる.
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次年度使用額が生じた理由 |
実験装置に利用するモータなどの部品について,他の実験装置と共通に利用することで,購入数を抑えることができたため,次年度使用額が生じた.
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次年度使用額の使用計画 |
研究打合せや成果発表の旅費に利用し,研究のより一層の促進に利用する.
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