平成30年度においては,3次元マニピュレータ,平面4リンクロボットなどの多自由度ロボットに対する特異姿勢の有用性を数値シミュレーション,理論解析,実機実験によって調べ,押し動作や引っ張り動作における特異姿勢付近の動力学について解析を行った.また,平成28,29年度に実施したモバイルマニピュレータなどに対する解析結果を含めて特異姿勢の動力学的性質について考察を行った.さらに,実際のロボット設計において重要となる関節モータのギア比およびそれに応じた摩擦に着目し,関節摩擦に応じた特異姿勢の特性と利用法について調べた. 3次元マニピュレータについては重量物の持ち上げ動作における特異姿勢の利用法を詳細に調べた.様々な条件における最適な持ち上げ動作を求めたところ,3次元マニピュレータでは,2リンクアームでは存在しない種類の特異姿勢についても利用する場合があることが分かった.これはリンク機構の関節(自由度)配置によって多様な特異姿勢が存在し,それぞれの特異姿勢に対して機構的拘束を活用した動作が可能であることを示唆している.さらに,関節モータのギア比を変えることで,最適な動作および活用される特異姿勢が変化することが確認された. また,ヒトの脚を模した平面4リンクロボットについては,最適な跳躍動作および押し動作を求めるとともに,実験機による検証を進めた.平成29年度に製作した試作機をもとに,平成30年度は本格的な実験機を製作しその動作を確認した.実験機の動作を再現するシミュレータを構築し最適動作を求め,押し動作における特異姿勢の性質と利用法を確認した. モバイルマニピュレータに関する解析結果等を学術誌において論文発表し,平面4リンクロボットの実験機製作や動作実験結果については,国際会議および国内会議において論文発表をおこなった.
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