本研究は,腕に力覚センサを設置した3リンク双腕水中ロボットを研究対象とし,マニピュレータを持つ浮遊型水中ロボット(UVMS; Underwater Vehicle-Manipulator Systems) の力制御法開発を,実験を通して行うことを目的として実施した.H30年度は,前年度製作の防水力覚センサユニットを搭載した水中ロボットを用いて,マニピュレータ手先が水中固定壁を押す力制御実験を実施した. まず,前年度までに開発した,ロボット本体とマニピュレータ手先の位置制御が可能なUVMS用分解加速度制御法にインピーダンス制御法を付加した力制御法の実験を行った.浮遊状態における実験では,マニピュレータ手先は十分な力を発生できないことを確認した.一方,水中固定物体を片手把持した場合の制御実験では,マニピュレータ手先発生力の増加とともに,ロボット本体の位置制御性能向上に伴い,力制御性能も向上することを確認した. さて,上記制御法は力ベースインピーダンス制御法を用いた方法である.そこで,もう一つの代表的な制御法である位置ベースインピーダンス制御法を適用した実験も行った.位置ベースインピーダンス制御法は,所望の力を発生するための手先位置目標値を求める方法である.実験結果より力制御ベースの方法と同様な制御性能が得られることを確認した. また,浮遊型水中ロボットによる力制御実現のためには,ロボット本体とマニピュレータ手先の位置制御が必要である.そこで,研究代表者らが提案している分解加速度制御法と,UVMSの基本制御法である計算トルク法とロバスト性を有するスライディングモード制御法を対象としてUVMS用位置制御法の比較検討も行った.計算トルク法とスライディングモード制御法は,手先位置偏差が残ることを示し,UVMSの力制御を実現するためには研究代表者らの提案法が有用であることを明らかにした.
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