水中ロボットの推進機にはスクリュープロペラが主流であるが,混濁水中では絡まりや巻き込みによる事故の破損や環境への危害などのリスクがあるために使用困難であり,静粛性や効率が優れている等の理由からも,ヒレ推進が有効であると期待されている.しかし,一般に用いられるサーボモータによるヒレ推進は,サイズの制約により小型化は難しい.そのような背景のもと,完全な気密性を保ちながらも,シンプルでコンパクトな原理で水中をヒレ推進する方法として,振動モータをロボット筐体内に内蔵し,筐体外部に固定した弾性板の共振を利用することで推進する小型水中推進機を考案してきた. 平成28年度に構築した振動モータの回転数制御系により,実験条件の中でも重要な項目の一つである振動周波数の再現性を高め,リアルタイムで意図的に指令することができるようになり,またバッテリー残量による変動を軽減することができるようになっている. 平成29年度は,このシステムを用いて,ロボット内部のモータ・回路系の固定方法および弾性板の固定方法を改善し,モデルの精緻性を高めた.3枚の弾性板により,直進性能および旋回性能の実験を行い,弾性板の形状による旋回性能(小回り半径)に差異が現れることを確認した.さらに,ロボットの外形に連続性を持たせることにより流体抵抗の低減や遊泳性能の向上を試みた. 平成30年度は,弾性板の振動による推力特性を精緻に評価するための実験環境の構築を進めた.さらに,ロボット上部に取り付けたマーカをカメラで捉えることで位置を取得し,左右に取り付けた異なる固有振動数の弾性板を選択的に加振することで,自動的に目標位置に誘導することに成功した.
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