研究課題/領域番号 |
16K06192
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研究機関 | 工学院大学 |
研究代表者 |
羽田 靖史 工学院大学, 工学部, 准教授 (70455450)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 移動ロボット / 電波伝搬 / 災害対応 / 未知環境 / 無線通信 / 行動生成 |
研究実績の概要 |
被災地の調査を行う遠隔操作型災害対応ロボットが、現在地点の無線通信状況と環境情報を元に、活動範囲の無線通信状況を動的に推定し、その結果から半自律的に通信状況の悪化防止・改善を行う技術の研究を行う。本研究により、災害対応ロボットが通信切断により行動不能に陥る事故を抑えることができる。本研究は①ベイズ推定を用いた過去及び未来の無線通信状況の推定技術の高度化、②通信状況の悪化を抑えるための行動生成、③状況悪化時の自律動作による通信回復、の三つの要素研究からなる。 ①については、無線通信状況の推定に必要な、環境構成材料の推定についての簡素化と、成果の取りまとめを行った。環境を構成する多種の材料を2種に大別し、さらに以前推定した群については再推定は行わないこととし、新しく得られた環境についてのみ推定を行うことで、時間計算量の大幅な削減を実現した。 ②については、以前の研究で行った環境の推定電界強度地図をベースに、ポテンシャル勾配法を用いてロボットの行動を生成する技術を開発している。通常のポテンシャル場では、目的地点に引力、障害物に斥力を生じさせるが、本研究では加えて環境の電界強度に応じた斥力場を設定し、三種類の仮想力場の線形和としてポテンシャル場を生成した。屋内環境でのシミュレーションを行ったところ、現状では設定した目的地点までたどり着いていない。 ③については、通信ができない領域に誤って入ったロボットに対し、その局所周辺の電界強度がより強い方向にロボットを動かし通信状況を改善させる方針を立てた。また、派生研究として、環境に予め複数の通信機を配置し通信環境を整備するために必要な、通信機の台数とその場所を求める手法の開発を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は①ベイズ推定を用いた過去及び未来の無線通信状況の推定技術の高度化、②通信状況の悪化を抑えるための行動生成、③状況悪化時の自律動作による通信回復、の三つの要素研究からなる。 ①については、昨年度に確立した理論をより実用的にするため計算量の実現を行うことができた。推定精度の向上が引き続き課題となる。 ②については、これまでの研究成果である推定電界強度地図を元に、既存のポテンシャル場を拡張した電界強度ポテンシャル場を実際に作成することができた。また実際のビルを模した複雑な環境を対象とした行動生成を行った。目標地点に対する引力の与え方と、三種類の仮想力場を線形結合する際の係数の決定が問題点として挙げられる。 ③については、測定には必ず誤差があるため、ロボットが誤って通信範囲外に移動した際の次善の策に関する研究である。これまでの研究成果である推定電界強度地図を基に、局所勾配の高い方向へ進む基礎理論の構築を行うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は①ベイズ推定を用いた過去及び未来の無線通信状況の推定技術の高度化、②通信状況の悪化を抑えるための行動生成、③状況悪化時の自律動作による通信回復、の三つの要素研究からなる。 ①については、今年度はシミュレーション計算量の削減手法を確立できたが、今後は精度の向上について取り組む必要がある。材料推定する区間を小さくすることで精度の向上を図ることができる。また現状のシミュレーションは二次元で行っているが、実環境では床や天井、什器などの地物に対して三次元で電波は伝搬するため、精度向上にはシミュレーションを三次元に対応させる必要がある。これらはともに計算量の増大を招くため、実用に資するための計算削減手法について検討を行う。 ②については、現状の問題として目的地点に与える引力場が適切でないことが明らかとなっている。屋内環境においては廊下などに沿った引力場を発生させるために、環境を廊下などの局所に区切り、局所毎にローカルな目標地点の引力場を生成することにより、目標地点までたどり着く経路の生成を試みる。 ③については、通信環境が悪化し行動不能に陥ったロボットが、より電波の強い方向に自律移動するために必要なシミュレーション手法の確立、また実際のロボットにおけるシステム開発を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
必要な消耗品(書籍)が売り切れで入手困難であったため、次年度再販時に改めて入手することとした。
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