研究課題/領域番号 |
16K06197
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研究機関 | 豊田工業大学 |
研究代表者 |
川西 通裕 豊田工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (00283870)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | Beowulfクラスタ / 量子型粒子群最適化 / 知的制御系設計 |
研究実績の概要 |
現有するBeowulfクラスタ計算機システムを用いた制御系の設計法として,知的制御系の設計法と粒子群最適化に関する研究を先行して実施した.本年度に得られた成果は大きく以下の(1)~(4)内容が含まれる.(1)知的制御系設計手法の実装として,ドライバーのアクセル操作と協調して動作するステアリングサポートシステムについて,フラットネスを用いた非線形性の補償に加えて,粒子群最適化によりステアリングの最大操作量を常に満たすことができる制御系設計手法を開発し,実機実験により有効性を証明した.(2)大規模複雑システムに対して有効な知的制御系設計手法の理論として,マルチエージェント制御理論の合意アルゴリズムに基づく分散型のADMM(Alternating Direction Method of Multiplies)法を提案し,電力ネットワークのデマンドレスポンスおよびエコノミックディスパッチの問題へ応用した.(3)マルチエージェントシステムに対する知的制御系設計手法として,入力と状態に制約が存在する非線形なヘテロ型のマルチエージェントシステムの合意制御について,制約を満たしながら所望の収束率で合意を達成する知的制御系の設計手法を提案した.(4)未知ダイナミクスを有するシステムに対する知的制御系の設計手法として,未知ダイナミクスの影響が大きいフラッピングロボットの制御について,非線形モデルフリー制御による設計手法および適応的極配置による設計手法を提案した. 以上の設計手法を統一的な枠組みのもとで取り扱い,NUC高密度Beowulfクラスタによる量子型粒子群最適化に基づく設計手法として実装することにより,未知環境に対応できる適応機構を備えた知的制御系手法を実現すること目指す.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
知的制御系の制御手法の開発について,大規模複雑システムに対して有効な知的制御系設計手法の理論については,当初の計画よりも進んでいる.大規模複雑システムに対してマルチエージェント制御理論と分散型のADMM(Alternating Direction Method of Multiplies)法に基づく有益な手法を開発することができたため,応用理論を展開することができ,大規模システムに対する知的制御系設計の制御理論の研究を進めることができている.一方で,NUC高密度Beowulfクラスタ計算機による実装については,当初の計画よりも先行している理論研究の成果も同じ枠組みで扱えるようにする必要があるため,理論研究と実装を同時に進めることは困難である.したがって,現在展開している研究の成果を取り入れてプログラムの実装を行うべく,当初の計画の順序を入れ替えて制御理論の研究を先行させ,ハードウェアの導入とクラスタの構築を1年先へと移行させる.
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今後の研究の推進方策 |
現在開発している制御手法に関して,現有するBeowulfクラスタ計算機で必要な実験データをすべて取得し,検証実験がすべて終わった段階で,当初の予定通りNUC演算ユニットを増設して,複雑なプロセスを並列に実行可能なNUC高密度Beowulfクラスタ計算機を構築する.ハードウェアの構築後,MPI(Message Passing Interface)ライブラリからMDCS(Matlab Distributed Computing Server)の環境への移行を行いシステムを完成させる.その後,当初の研究実施計画に沿って,量子型粒子群最適化法に基づいて効率の良い手法を開発出来る可能性が高いと考えられる双線形行列不等式について,双凸性を活用したアプローチによるアルゴリズム開発の研究を行う.また,様々な状況への柔軟な適応力と安定性が求められる「跳躍ロボット」,「歩行アシスト装置」,「マルチエージェント」の制御系設計において,制御理論の応用と実装を進める.
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究費で構築する予定であったNUC高密度Beowulfクラスタ計算機は,電力配線,ネットワーク配線,冷却設備,一部のノードを,現在稼働しているBeowulfクラスタ計算機と共有する必要がある.しかし,これまでに開発した理論による制御系設計プログラムの有効性を検証するために現在のBeowulfクラスタ計算機による数値実験を継続する必要があり,また現在大きく進展している理論に対応した実装を行うためには理論の進展を待って実装をスタートさせる必要があったため,本研究費で導入する予定だったNUC高密度Beowulfクラスタ計算機設備の導入を1年遅らせた.よって,これに伴い予算の繰り越しが発生した.
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次年度使用額の使用計画 |
現時点までに,現有のBeowulfクラスタ計算機で実行する必要があった数値実験は現在収束しつつある.今年度は,現有設備による実験が完全に終了した後に現有設備の運用を止めて,本研究費によってNUC高密Beowulfクラスタ計算機を整備し,実験を再開する計画である.
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