研究課題/領域番号 |
16K06201
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研究機関 | 大阪工業大学 |
研究代表者 |
田熊 隆史 大阪工業大学, 工学部, 准教授 (40437372)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 空気圧人工筋肉 / 跳躍ロボット / 多関節筋 |
研究実績の概要 |
本研究は動物の巧みな構造をロボットの機構に取り入れ,従来の制御技術では困難であった運動を実現するものである.具体的には跳躍運動を対象に,ヒトや動物が有する二関節筋(二つの関節に跨り,一方の関節が屈伸するともう一方の関節も連動する筋)を具備したロボット(以下「筋駆動ロボット」)を開発し,連続跳躍の実現を目指す.2016年度は初年度にあたって,任意の姿勢・着地角度であっても転倒することなく着地できる二関節筋の取り付け位置について調査した.また二関節筋にヒントを得て,多関節筋に相当するワイヤによって,一つのアクチュエータを駆動することで三つの関節(腰関節,膝関節,足首関節)を連動させて跳躍するロボット(以下「ワイヤ駆動ロボット」)を提案した.2016年度は関節付近に設けたワイヤ経由点の位置と跳躍の可否について調査した.両ロボットともシミュレーション上にモデルを構築し,設定したパラメタの値と挙動について観察した.シミュレーションの結果,筋駆動ロボットでは多少異なる着地姿勢や着地角度であっても転倒することなく着地できる二関節筋の筋配置が存在することが分かった.またワイヤ駆動ロボットでは一つのアクチュエータでありながら自身の身長程度に跳躍可能なワイヤ経由点が存在することが分かった.また両者とも,筋の取り付け位置やワイヤ経由点の位置が多少異なったとしても安定した着地や跳躍が可能なパラメタ群が存在することが確認された.研究を進めるにあたり,体幹構造の運動も重要であることが明らかになった.ヒトにおける体幹の重心位置は足から離れており,体幹の運動によって跳躍運動の正否が大きく変わる.2016年度は生物を模した体幹機構を構築し,跳躍よりも比較的安定な歩行運動や起き上がり運動においてその効果を確認した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2016年度の目標は筋駆動ロボットの安定した着地とワイヤ駆動ロボットの高い跳躍および着地の実現をシミュレーション上で確認することであった.筋駆動ロボットはシミュレーション上(Open Dynamics Engine)にモデルを構築し,二関節筋の始点および終点位置と駆動される関節間の距離を様々に変えて着地の成否を調査した.二関節筋はヒトの構造に倣い三つ(大腿直筋,ハムストリングス,腓腹筋)を選択した.始点・終点位置と関節間の距離として,2016年度は各パラメタにつき3段階(近位,中位,遠位)変更することにした.調査の結果,特定の筋取り付け位置では多少取り付け位置がずれたとしても安定して着地が可能であることが確認された.これは今後実機を試作するにあたって,いわゆる「ピーキー」な位置設定にすることなく着地が可能であることを示している. ワイヤ駆動ロボットもシミュレーション上で構築し,アクチュエータは体幹に背負う形にした.そこから股関節付近,膝関節付近に経由点を設け,経由点とワイヤの摩擦により各関節が駆動するとした.またワイヤの終点を足リンクに取り付けた.この経由点を網羅的に調査した結果,前者同様多少位置がずれても高く飛び着地できる経由点のセットがあることが確認された.体幹構造についても起き上がり運動や二脚・四脚歩行において体幹の粘弾性が運動に大きな影響を与えることをシミュレーションで確認した.筋駆動ロボットの着地運動については既に学術講演会でも発表をしており,ワイヤ駆動ロボットの跳躍運動については近々発表予定である. 体幹構造についてはいくつかの学会や論文誌で発表した.以上のことより,申請書に記載した2016年度の予定は概ね順調に進展したと言える.
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今後の研究の推進方策 |
2016年度は当初の目的を概ね達成することができたため,2017年度は次のステップに着手する.筋駆動ロボットは前年度に得られた筋配置に関する結果を基に,着地によって貯められたエネルギを適切に解放することで高い跳躍および次の着地ができる運動の生成にあたる.また同時に,本研究の最終的なゴールである実機での検証のため,部品図面の作成および加工,電装系の構築などにあたる.ワイヤ駆動ロボットについては数理モデルを構築し,経由点の位置と跳躍の関係について数理的に解析を行う.またワイヤ駆動ロボットについても実機による検証を行うため,部品図面の作成および加工,電装系の構築などにあたる.体幹機構の効果についてはシミュレーションで効果が確認されたため,実ロボットに搭載して実世界での挙動を観測する.得られた知見は,国内外の学術講演会で発表する予定である.また跳躍ロボットの研究者や生物の研究者とディスカッションを行い,生物との類似性および相違点を整理し,より効率的な跳躍運動および着地運動を実現するための機構およびコントローラについて議論する予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
購入予定であったコンピュータについて,使用用途とスペックを吟味した結果,当初予算よりも低い価格で購入が可能となった.また支出を予定していた人件費について,2016年度は外部からの講師は招かず学会などの機会を利用して議論をしたため,支出が不要となった.情報収集のため学会出張を予定していたが,業務多忙のため1件断念し,旅費および参加費(「その他」)の支出が予算より低くなった.
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次年度使用額の使用計画 |
2017年度に試作を予定しているロボットについて,当初予定していた機構・センサ類に加えて新たな要素を取り入れる予定である.次年度使用額は主にこれらの要素のための消耗品として使用する予定である.
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