研究課題/領域番号 |
16K06202
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研究機関 | 岡山理科大学 |
研究代表者 |
赤木 徹也 岡山理科大学, 工学部, 教授 (50311072)
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研究分担者 |
堂田 周治郎 岡山理科大学, 工学部, 教授 (10090218)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 柔軟空気圧シリンダの低コスト&低摩擦化 / ワイヤ式リニアポテンショメータ / 低コスト3次元位置計測システム / ポータブル上肢リハビリテーション機器 / ウェアラブル手首リハビリテーション機器 / 組込みコントローラ |
研究実績の概要 |
使い捨て可能な低コスト・ウェアラブル空気圧制御機器の開発と改良として,本年度は,柔軟な空気圧シリンダの構造の簡略化による低コスト化と低摩擦化をめざしたスライドステージ部分の改良を行った.具体的には,柔軟チューブ内部にあるシリンダヘッド用の鋼球をチューブ外部から押さえて鋼球を保持していた真鍮製ローラを,ベアリング等に使われる小径の鋼球で周囲から絞めるように配置したスライドステージを構成することで,シリンダ構成時の省力化と最低駆動圧力の約20%の低減が実現できた.また,このシリンダを用いた安価なウェアラブル手首リハビリテーション機器を開発し,制御弁の個数を減らした状態でも振動の生じにくい制御則を適用し,目標曲げ角に対する追従制御を行った.さらに,市販の空気圧シリンダに比べ摩擦の大きな柔軟空気圧シリンダの位置決め制御の改善のため,むだ時間を考慮した外乱オブザーバを組み込んだ安価な組込みコントローラ(2千円程度)を構築し,位置決め制御を行うことで制御性能が改善したことを確認した.また,柔軟空気圧シリンダの変位センサとして,ヘリカルポテンショメータとゼンマイ式ワイヤリールを用いた材料費千円程度の安価なワイヤ式リニアポテンショメータを開発し,さらにそのワイヤとシリンダ内にある鋼球とを接続し,シールを保ちながら,スライドステージの変位を計測できるシステムを構築した.さらにそのセンサ内蔵型柔軟空気圧シリンダの位置決め制御を行い,その有効性を確認した.また,柔軟空気圧シリンダで構成された球面アクチュエータを用いたポータブル上肢リハビリテーションの性能改善として,上記のワイヤ式変位センサを3つ用いた低コスト3次元位置計測機器を開発し,3点計測の原理を用いた計測モデルを安価な組込みコントローラで処理する計測システムを構築した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
使い捨て可能な低コスト・ウェアラブル空気圧制御機器の開発と改良をテーマとした本研究の進捗状況は以下の通りである.現在のところ,研究実績の概要にも述べたように,リハビリテーション機器のアクチュエータである柔軟空気圧シリンダを構成する上で,精度を必要とする(コストのかかる)構成部品であった真鍮製ローラを,入手が容易なベアリングの鋼球に変えたスライドステージを構成することで,シリンダ一本当たりの製作に必要な作業時間を大幅に短縮できた.また,シリンダの最低駆動圧力と鋼球配置との関係を調べることで,シリンダの低摩擦化も実現できた.さらに,動作時に湾曲もできる柔軟空気圧シリンダのスライドステージの変位計測といった特殊なセンサとして,多回転のヘリカルポテンショメータとゼンマイ式ワイヤリールを用いた材料費千円程度の安価なワイヤ式リニアポテンショメータを開発し,さらに,ワイヤをシリンダ内部にあるシリンダヘッドに直接接続し,シールを保つ特殊な機構を安価に構成することで,センサの材料費千円程度で,湾曲時でも変位計測が可能なセンサ一体型柔軟空気圧シリンダを開発できた.また,この特殊なポテンショメータを3つ用い,3点計測の原理を用いた安価(材料費5千円程度)な3次元座標計測装置を構成することができた.また,前述の低摩擦シリンダを用いた,簡易型の手首リハビリテーション機器の開発や,安価(2千円程度)でメモリ容量の少ない組込みコントローラに,通常PCなどで構成する外乱オブザーバなどの制御理論を含む制御系を構成し,制御性能の改善を行うなど,本研究の目的であるウェアラブル空気圧制御機器の「低コスト化」と「性能改善」の両立ができており,本研究は計画通りに順調に進んでいるものと自負する.
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今後の研究の推進方策 |
今後の計画としては以下の通りである.まず,昨年度開発したワイヤ式変位センサを3つ用いた低コスト3次元位置計測機器に改良を加え,コンパクト化を行い,上述の柔軟空気圧シリンダで構成された球面アクチュエータの2つの保持ステージの内側に配置し,2つのステージの座標を計測する.さらに,その座標変位を用いた,保持ステージの位置決め制御を行う予定である.また,申請時の計画通り,水道圧を利用したリハビリテーション機器の開発について検討する.水道圧は,家庭で簡単に入手できる流体圧力源であり,その圧力の利用には,防錆性のある弁が必要になる.そこで,以前の研究で開発したチューブの屈曲角をラジコン用のサーボモータで制御することで,気体/液体の両方流体の流量を制御できる弁を用い,リハビリテーション機器の水道圧を利用した制御システムの開発を行う.特に,この弁は,通常のサーボ弁のように流体に接した摺動部を有しないことから,水道水による錆の心配がなく使用できるメリットがある.また,弁はサーボ的に流量調整が可能であるにもかかわらず,弁開口部の調整がチューブによってのみ行われるため,材料費は千円以下と非常に安価であり,昨年度省力化した柔軟空気圧シリンダと組合せることで,本来の目的である「使い捨て可能な低コスト・ウェアラブル空気圧制御機器」の開発ができるものと考える.また,低沸点流体の気・液相変化を利用したアクチュエータ用い,患者自身がお風呂につかりながらリハビリテーションを行えるようなリハビリテーション機器の開発についても検討する.また,余裕があれば,家庭での使用を考慮し,コンプレッサなどの大きな音を生じない動力源を用いたリハビリテーション機器の開発や,チューブの屈曲を利用した弁のメンテナンス性や耐久性向上のための改良,ウェアラブル手首リハビリテーション機器の低コスト化も視野に入れた性能改善について検討する.
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