本研究では,歩行動作中の下肢アライメントおよび下肢機能軸の動的な変化を評価する動作解析方法を確立し,その方法を用いた動作異常の検討を目的とした. 平成28年度では,下肢機能軸の評価方法としてポイントクラスター法を基にした臨床歩行分析研究会の股関節中心推定法による健常者の下肢機能軸の動的変化を検討し,下肢機能軸の脛骨関節平面通過点の軌跡により膝関節アライメントを評価可能であることを明らかにした. 平成29年度では,この下肢機能軸と膝アライメント評価で用いられる大腿脛骨角度の指標の相関を評価し,有意な相関があることを明らかにした.さらに,平成29年度から平成30年度にかけて,膝関節症患者の歩行動作における下肢機能軸の膝関節面通過点を評価し,健常者に比べて全体的に内側にシフトしており,荷重応答期においては内側後方へ移動する異常変位も確認できた.このことから本研究で提案した下肢機能軸による膝アライメント評価により,実際に膝関節疾患患者の動作異常を検出することが可能であることを明らかにした.また,3次元動作解析システムだけでなく,正面から撮影したビデオ画像においても下肢機能軸の評価が可能であり,歩行中の膝関節前額面アライメントを評価できることを明らかにした. 平成30年度においては,膝関節にかかる負荷である膝関節内反モーメントと下肢機能軸の左右位置の相関を検討し,相関が高くないことを明らかにした.それにより膝関節に実際にかかる負荷はアライメントだけでなく作用する力も考慮しなければいけないことが示唆された.さらに,この下肢機能軸による膝アライメント評価を視覚化するために,OpenGLを用いた描画ソフトを作成した.これにより算出された下肢機能軸と関節セグメントや関節中心などを画面上に表示することができ,わかりずらかった位置関係アライメントを視覚的に比較,評価することが可能となった.
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