研究課題/領域番号 |
16K06206
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研究機関 | 佐世保工業高等専門学校 |
研究代表者 |
真部 広紀 佐世保工業高等専門学校, 一般科目, 准教授 (10249881)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 洞窟 / 探査 / 縦孔 / 地下空洞 / UGV / UAV |
研究実績の概要 |
近年、月や火星の地表面には、溶岩洞窟の「天窓」と推定される巨大な縦孔がJAXAのSELENE(かぐや)、NASAのLROやMROの探査機カメラ画像データの解析研究によって数多く発見されてきた。地表面に較べて温度変化が少なく、宇宙線・太陽フレア・紫外線や隕石・デブリからの防護されているため、数多くの学術成果が期待されるフィールドである。また、天体観測機器の設置場所や将来的な探査プロジェクトの有人基地建設の候補地として有望視されている。本課題の目的は、未知の洞窟、とくに地球外天体の縦孔・地下空洞を遠隔操作や自律的に進入・計測する手法の構築とシステムの提案にある。UGVとUAVの洞窟の直接探査シミュレーション実験の裏付けをもとにシステムの開発と実証を行い、定量的な計測データの獲得・活用をテーマに据えている。2017年度に地上移動ロボット(UGV)に搭載したレーザーセンサー(Lidar)による人工洞窟の3次元レーザー測定を行い、実験後の別途処理により3次元モデルを作成した。また、火星の航空機縦孔探査プロジェクトを踏まえて、ドローン(UAV)による洞口周辺地形撮影の予備実験も行った。 2018年度では、レーザー測定中に3次元モデルをリアルタイムで生成するSLAM実験を実施した。また、縦穴の上空に位置させたドローン(UAV)により、SfM/MVS写真測量、レーザースキャナーによる形状測定、赤外線カメラによる洞口検知の実験を実施した。写真測量とレーザー測定のデータから縦穴洞口付近の3次元モデルをそれぞれ作成し、比較検証を行った。火星のダストストームによる大気擾乱や太陽光遮蔽は航空や太陽光発電の障害になるため、その発生範囲と時期を予測する必要がある。気象・日照量観測体制作りの予備実験として、ドローン(UAV)による探査地上空のエアロゾルのリアルタイム観測を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2018年度は研究項目の目標を殆ど達成している。(1)地上移動ロボット(UGV)に搭載したレーザーセンサー(Lidar)によるSLAM(自己位置推定と環境地図作成)については、人工洞窟(長崎県佐世保市「無窮洞」)内においてレーザー測定中に3次元モデルをリアルタイムで生成するSLAM実験に成功した。(2)ヘキサコプター型ドローン(UAV)に搭載したレーザースキャナーによる縦穴の形状測定については、山口県美祢市秋吉台カルストのドリーネ内に開口する縦穴「恵藤穴」において、上空に位置させたドローンを使用したSfM/MVS写真測量(可視光カメラ)・ 3次元形状測定(レーザースキャナー)・洞口検出(赤外線カメラ)の実験を12月と3月に実施して目標を達成した。可視光カメラとレーザースキャナーの計測データのそれぞれから作成し、縦穴洞口付近の3次元モデルについて比較検証を行った。(3)ドローン(UAV)と地上移動ロボット(UGV)を結ぶ無線データ通信については、年度末の3月まで(2)の実験に注力したため、次年度の研究実施項目に変更した。(4)クァッドコプター型ドローン(UAV)による縦穴等の探査地上空においてエアロゾルのリアルタイム観測を行った。
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今後の研究の推進方策 |
本課題の構想は探査実験用候補地(類似地形)の予備調査を皮切りに、水中考古学ROV調査、洞窟探検調査、水中洞窟の潜水調査・ROV調査、UGV洞窟計測探査実験、洞窟レーザスキャナ測量、UAV洞窟計測探査実験・考古学遺跡のSfM/MVS写真測量等の様々なプロジェクトにより醸成した。2018年度までに佐世保工業高等専門学校・松江工業高等専門学校・九州大学・国士舘大学・日本文理大学・名古屋大学宇宙地球環境研究所・JAXA宇宙科学研究所・東北大学流体科学研究所・日本洞窟学会の有志メンバーによる横断連携組織『洞窟計測探査シミュレーションプログラム』を構築し、2018年度は国立高等専門学校機構の研究ネットワーク形成支援事業「地球外洞窟及び氷衛星氷層下水中環境の計測探査シミュレーションに関する研究ネットワーク形成に向けた準備活動」として採択された。2019年度は『洞窟計測探査シミュレーションプログラム』を基盤として、UAV(ドローン)やUGV(地上移動ロボット)に搭載したレーザセンサの向きの制御と複数の点群の自動統合、洞窟内と洞口周辺地形のシームレスかつリアルタイムな3次元SLAMによる移動経路生成を研究する。洞窟内のようなGPSが使用できない環境下におけるナビゲーションの研究と連携することにより、費用対効果の大きい複合UV洞窟計測探査システムを構築する。発展段階として、火星の超低圧大気環境下において使用可能なローターや固定翼の研究、超高効率モーターの研究と連携し、火星環境下における複合UV洞窟計測探査システムの構築を目指す。また、『ドローンと小型センサを利用した大気微量気体とエアロゾルの3次元計測』(名古屋大学宇宙地球環境研究所との一般共同研究)による地球大気環境測定システムの研究を進める。発展段階では、火星環境の気象研究と連携することにより、火星UAVへの影響評価や運用計画策定を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究項目(2)「ヘキサコプター型ドローン(UAV)に搭載したレーザースキャナーによる縦穴の形状測定」の計測実験(第1回、12月)において、レーザー測定システムの改良すべき箇所が判明したため、改良後の実験(第2回)を3月に実施したが、さらに測定システムの大幅な形状変更が必要になることが判明した。このスケジュールの遅延によって、形状変更した測定システムの実験(第3回)と研究項目(3)[ドローン(UAV)と地上移動ロボット(UGV)を結ぶ無線データ通信]を2019年度実施分に変更したことにより、研究項目の2019年度組み込みに伴い必要な予算を繰り越したため、2018年度の使用額との差が生じた。
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