電力系統の周波数調整能力は、系統接続された同期発電機によって付与される。これより、従来同期発電機が担当していた部分が再生可能エネルギー電源に置き換わると、電力系統の環境性が向上する反面で、安定供給性が著しく低下する結果に繋がりかねない。本研究では、風力発電システムの二次励磁誘導発電機(DFIG)に用いられる電力変換装置に擬似ガバナ制御機構を搭載すると共に、先行研究で開発した同期化力インバータ技術を併載することで、系統周波数調整機能を具備した新しい風力発電システムを開発するものである。 初年度は、DFIGの回転子側インバータの制御アルゴリズムに動揺方程式を用いることで同期化力を付与した同期化力インバータを適用し、シミュレーションによって提案手法の動作検証を行った。その結果、提案した制御手法では回転子の過回転が起こりうることを確認した。この回転子の過回転防止のために擬似ガバナ制御を適用し、過渡的な周波数変動を抑制できることを確認した。 次年度は、急激な回転子角速度の変化を抑制し、周波数調整機能を向上させる新しいピッチ角制御を開発し、周波数調整機能による回転子角速度の上昇を抑制できることを確認した。 最終年度は、提案したピッチ角制御の機械的な制約により、負荷解列直後の回転子角速度の上昇が十分に抑制できていないことから、状況に応じて周波数調整力を決定できる、回転子角速度の急峻な変化を抑制する、という二点を重視した周波数調整機構を考案した。その上で、同期化力インバータ・疑似ガバナ・ピッチ角制御などの制御系を組み入れた総合的性能試験用シミュレーションモデルを構築して計算機シミュレーションを行い、開発した技術の機能、効用を検証し、その有効性を確かめた。
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