研究課題/領域番号 |
16K06216
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
道下 幸志 静岡大学, 工学部, 教授 (50239274)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 雷 / 冬季雷 / 夏季雷 / 配電線 / スパークオーバ / 電磁界観測 |
研究実績の概要 |
夏季には鹿児島、宮崎で,冬季には新潟、東広島、鹿児島、福岡で,雷電流波形の推定精度向上のために,ファーストアンテナを用いた電磁界観測を実施した。また,鹿児島、福岡,益田において雷のエネルギーを推定するために,スローアンテナを用いた電界観測も実施している。現在のところ推定結果と実測結果は良好に一致しており,電磁界観測結果による雷パラメータの推定結果は,配電線の雷被害率評価を実施する上で,実用上十分な精度を有していると判断している。 平成30年3月にも電磁界と鹿児島の風車での雷電流の同時観測結果が得られたが,年度末であったことから電磁界観測結果を交えた検討はこれから進める予定である。秋田では3月までに数10例の雷電流の観測結果が得られている。昨年度までに鹿児島、益田、秋田で得られた雷電流観測結果を比較して雷電流波形パラメータの地域特性・季節特性を明らかにした。この結果,配電線の雷被害を検討する際には雷パラメータの地域特性を考慮する事は必須であることが明らかになった。 シミュレーションについては従来多相スパークオーバを配電雷事故と見なしてきたが,実測結果に基づいて短絡電流も新たに判断材料に加えたシミュレーションを実施した。この結果,雷被害率の推定結果は現実の被害率に近づくことが明らかになった。また,避雷器の被害については計算結果が実測結果を数倍上回っている。避雷器被害に関しては定格容量を用いて検討を進めているが,現実の避雷器はより大きい耐量を有していることを考慮した解析を実施する必要があると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
下向き放電の多い夏季雷及び上向き放電が多い冬季雷に関して,電磁界波形から雷電流波形を精度よく再現できる事を実測結果と推定結果の比較により示した。 また,雷のエネルギーに関しても概ね精度よく推定できることも既に明らかにした。 配電用碍子のフラッシオーバモデルを改良する事により現実に近い結果が得られることが判明した。 更なる精度向上を目指して,短絡電流も考慮した解析も実施していることから当初の計画以上に進展していると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画通り電界及び磁界波形並びに雷電流波形観測を継続して実施し,データを蓄積する。研究期間に得られた同時観測データに基づいて,さらに精度の良い雷電流波形パラメータ並びに継続時間の長い連続電流を含めた雷エネルギーの推定手法の開発を目指す。 電界及び磁界波形観測結果を解析して得られた雷電流波形パラメータ及び雷エネルギーの統計整理を実施し,配電線雷被害率推定のために用いる雷パラメータを提示する。 また,電力線に生じるフラッシオーバ被害発生の判断基準として,新たな要因を考慮し,雷被害率の評価を実施する。 得られた計算結果と現実の被害率を夏季雷地区及び冬季雷地区で各々比較検討し,高圧配電線雷被害率の計算精度の更なる改善に向けた課題を抽出する。
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