夏季及び冬季の配電線雷被害率の実績と計算結果を比較すると,夏冬共にスパークオーバ事故は実績とほぼ等しい値が得られたが,避雷器焼損事故の計算結果が実績を大幅に上回る事が明らかとなった。これは,現実に使用されている避雷器のエネルギー耐量が計算上想定している定格を大幅に上回っていることが一因であると考えられる。 また,冬季と夏季とを比較すると冬季の方が相違は小さくなった。これは,現実の避雷器のエネルギー耐量が大きい事が避雷器焼損に及ぼす影響の度合いは,相対的に雷エネルギーの大きい冬季雷よりも小さい夏季雷の方が大きいためと考えられる。 雷エネルギーは雷電荷量で代表され,主として北陸地方で観測されたパラメータがシミュレーションに用いられている。研究代表者らは,北陸地方と東北地方で得られたパラメータを比較して両地区のパラメータには相違がある事を解明し,これらは電荷の電離が効率的に行われるため電荷中心が存在するとされる-10℃層高度等気象条件の相違によるものであることを突き止めた。また,観測された雷電流データの多くは上向き雷によるものであり,上向き雷で電荷量が大きくなるのは低電流が長時間続く初期連続電流のためであるが,この電流は多くの場合避雷器焼損には寄与しないことも明らかになった。 以上の結果から配電線の雷被害率算出に用いる冬季雷電流モデルでは,概ね3kA以上の電流波形を中心にモデル化する必要がある事も明らかにした。
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