研究課題/領域番号 |
16K06218
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研究機関 | 豊橋技術科学大学 |
研究代表者 |
稲田 亮史 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (30345954)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 衝撃固化現象 / エアロゾルデポジション法 / 電極活物質 / 酸化物固体電解質 / コンポジット電極 / 全固体電池 |
研究実績の概要 |
本研究では,酸化物系全固体リチウム電池への応用を念頭に置き,常温下にてセラミックス粒子を基板に高速衝突させた際に生じる衝撃固化現象を利用したエアロゾルデポジション(AD)法を用いて,リチウムイオン電池用電極活物質とリチウムイオン伝導性酸化物固体電解質から成るコンポジット電極を形成を目指す。平成28年度の主な研究成果は以下の通りである。 (1) 活物質-固体電解質複合粒子の調整とAD法による金属基板上での電極化検討 ボールミル処理と熱処理を組み合わせたプロセスにより,リチウムイオン電池用電極活物質LiMn2O4(LMO)へのリチウムイオン伝導性固体電解質Li3BO3(LBO)の複合化を試み,複合化に伴うLMO自身の電気化学特性への影響の有無を調査した。また,LMO/LBO複合粉末を用いて,AD法による金属基板上へのLMO/LBOコンポジット膜形成を試みた結果,LBO複合量2~3wt%のときに空孔が殆どない高密度なコンポジット膜を作製することができた。一方,LBO複合量5~10wt%とした複合粉末を用いた場合には,低密度で基板との結着性も低い結果となった。LBOを複合化していないLMO膜と比べて,複合量2~3wt%のLMO/LBO複合膜は電解液中で高い充放電容量を示すことを確認した。膜が高密度で電解液との接触面が膜面近傍に限定されることを考慮すると,膜内に分散したLBOがイオン伝導パスとして機能し,LMOの利用率が向上したためと考えられる。 (2) 酸化物固体電解質焼結体シートの合成とリチウムイオン伝導特性評価 次年度の研究において,電極形成の基板として使用する酸化物固体電解質焼結体シートを合成した。ガーネット型酸化物固体電解質焼結体を固相反応法により合成し,室温下にて1 mS/cm程度のイオン伝導率を有する焼結体を再現性良く合成できる条件(組成・焼結条件)を概ね確立した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画検討当初に予定していた,活物質粒子(LMO)への固体電解質材料(LBO)の複合化、および合成したLMO/LBO複合粉末を直接原料とした金属基板上へのコンポジット電極の形成・評価に関して,電解液中ではあるが固体電解質材料の複合化による膜電極の充放電特性の向上を確認することができた。 また,次年度の研究でコンポジット電極を形成する基板として使用するガーネット型酸化物固体電解質焼結体シートについて,室温下にて10-4 S/cmオーダーのイオン伝導率を有する焼結体を安定して合成できる条件を概ね確立することができた。 以上より,研究はおおむね順調に進展していると判断される。
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今後の研究の推進方策 |
活物質(LMO)に複合化する新たな固体電解質材料としてLiVO3(LVO)に着目し,LVOの複合化に伴う活物質の電気化学特性への影響を精査すると共に,金属基板上へのLMO/LVOコンポジット電極形成を行う。電解液中での電気化学特性評価に基づき,初年度に実施したLMO/LBOコンポジット電極との比較検討を行う。 得られた結果に基づいて,ガーネット型酸化物固体電解質シート上にコンポジット電極を形成する。固体電解質シートの別端面に対極(負極)として金属リチウム箔を圧接して全固体二極式セルを構成し,電気化学特性(充放電特性,電気化学インピーダンス特性)を評価する。全固体セルの場合,室温下では円滑な電池反応が実現できない可能性があることを考慮して,電気化学特性の測定は室温~100℃の温度範囲にて実施する。得られた結果に基づいて,コンポジット電極内及び電極-固体電解質シート接合界面の微細組織と電気化学特性の関連性を考察する。これにより,固体電解質シート上に形成にしたコンポジット電極において,活物質本来の充放電容量を最大限に引き出す方策を検討する。
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