研究実績の概要 |
本研究では,酸化物系全固体リチウム電池への応用を念頭に置き,セラミックス粒子の衝撃固化現象を利用したエアロゾルデポジション(AD)法により,リチウムイオン電池用電極活物質とリチウムイオン伝導性酸化物固体電解質から成るコンポジット電極を形成しその電気化学特性を精査した。最終年度の主な研究成果は下記の通りである。 (1)活物質-固体電解質コンポジット電極の作製及び特性評価 正極活物質であるLiMn2O4(LMO), LiFePO4(LFPO)およびLiV3O8(LVO)と,成形性に優れるγ-Li3PO4型固体電解質とのコンポジット膜(3~10μm厚)をAD法で作製した。金属基板上に形成した各コンポジット膜の充放電特性を有機電解液中で評価した結果,LFPO以外は固体電解質とのコンポジット化により可逆容量が増加した。特に,LMOコンポジット膜は10μm程度に厚膜化しても比容量低下が殆どなく,検討範囲内で膜厚にほぼ比例した実容量が得られることを確認した。同コンポジット電極を成膜したガーネット型固体電解質にリチウム対極を接合して全固体セルを構成し,100℃での充放電特性を評価した結果,クーロン効率・比容量共に有機電解液中よりも低い結果となった。コンポジット電極層と固体電解質間の界面抵抗が依然として大きいためと考えられる。 (2)高容量合金系負極活物質の膜電極化及び特性評価 高容量合金系負極活物質の一つであるSn4P3に着目し,AD法による電極化検討を行った。本材料は高い電子伝導性を有すると共に,リチウムイオン吸蔵時にリチウムイオン伝導体であるLi3Pを生成する。このため,電気化学反応を通じてコンポジット電極がその場形成される特徴がある。Sn4P3膜(2μm厚)を成膜したガーネット型固体電解質にリチウム対極を接合して全固体セルを構成し,100℃で充放電特性を評価した結果,初回サイクル時に800mAh/g,10サイクル後に600mAh/g程度の高い可逆容量を得ることができた。
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