自励式変換器を適用した直流多端子システムと連系した多端子直流システムに対する動特性モデルを構築し,直流多端子システム側で構成変化が生じた場合に,直流多端子システムのトポロジーの違いにより,システム全体の過渡安定性に現れる違いを明らかにしてきた。本研究で対象としたシステムでは,2つの非同期交流システムが端子直流システムを介して連系されている系統構成を考えている。非同期交流システムの内,一つはは動特性を有する1機の同期発電機と無限大母線を有し,これらは直流多端子送電線を介して2つの自励式変換器に接続されている。他方の交流システムは無限大母線のみが送電線を介して自励式変換器に接続されている。この設定は非同期交流システムにおいて動特性を呈する場合の最も簡単なケースを想定したものである。2種類の異なるトポロジーの直流多端子システムを考え,一つは全ての直流母線が直流送電線を介して互いに接続しており,もう一つはその直流送電線を取り除いた場合に相当する。これらのトポロジーの設定は数値例において結果の差異が見やすいものである。交流システム間で有効電力を授受するような制御指令値を自励式変換器に与えた場合,多端子直流システムの構成により直流送電線に流れる電力潮流の大きさだけでなく方向も異なる。交流システムの直流多端子母線間の送電線に何らかの故障が発生し,2回線送電から1回線送電に切り替わった場合の過渡応答について検討した結果,交流/直流多端子システムは過渡的応答を呈した後に定常状態に収束することを明らかにした。直流多端子システムの過渡応答は発電機の動揺と比べ早く収束している。単位長さあたりの線路抵抗と線路リアクタンスを用いて求めた直流送電線の時定数は同期発電機の時定数と比較して小さく,現象と一致することを確認した。
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