研究課題/領域番号 |
16K06222
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
植田 浩史 岡山大学, 自然科学研究科, 准教授 (10367039)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 高温超伝導 / マルチフィラメント / 遮蔽電流 / 結合電流 |
研究実績の概要 |
REBCO超伝導線材は,薄膜テープ形状であるため,特に遮蔽電流が顕著に生じるが,超伝導層を細線化することで遮蔽電流磁場が抑制されることが期待される。しかし,マルチフィラメント化REBCO線材は,機械的強度や熱的安定性を確保するため,銅メッキが施され,その結果,励磁の際に結合電流がフィラメント間を流れることになる。これまでに我々は解析によって,DC応用では,フィラメント間の抵抗率が適切であれば,励磁中はフィラメント間が結合していても,ホールド後は結合が徐々に切れて,マルチフィラメントの効果が現れることが明らかとなっている。一方,Bi2223超伝導線材は,多芯線であるため,遮蔽電流磁場はREBCO線材ほど大きくはないが,フィラメント間がブリッジしている箇所があり,結合電流が流れることが知られている。 REBCO線材は,基板上に超伝導層を蒸着した積層構造した薄膜線材で,安定化のため銅メッキが施されるのが,一般的である。マルチフィラメントREBCO線材は,超伝導層を細線化した後,線材全体が銅メッキされる。したがって,フィラメント間は絶縁されることなく,結合電流が流れることになる。解析では,薄膜近似を用いるため,線材周囲を取り囲んでいる銅メッキは考慮できないが,フィラメント間の隙間部の抵抗は考慮できる。そこで,フィラメント間の隙間部に銅メッキの抵抗や界面抵抗を含む実効抵抗を持つ等価的な導電性材料を与えて,薄板近似を適用することにした。また,Bi2223線材はマルチフィラメント線材であるが,薄板近似を用いて,ブリッジングを考えることにした。 以上のモデルを用いて,本年度では,マルチフィラメント高温超伝導材で巻線した高温超伝導コイルを対象に,電磁場解析に基づいて,巻線内電流分布や遮蔽電流磁場について評価した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画に記載通りに進んでいる。 マルチフィラメント構造の高温超伝導線材で巻線されたコイルを対象に解析を実施し,電磁力や熱解析も開始した。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに開発してきた解析技術は、解析パラメータの設定が複雑である上、計算容量計算時間は膨大であり、数値解析を利用する者には大変な負担となる。そこで、既に開発している上記解析技術を“フルスペック”の解析と位置付け、本研究のこれまでのモデル化等の成果を踏まえ、計算の簡素化を図る。
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次年度使用額が生じた理由 |
計画で購入予定であったハイパフォーマンスコンピュータの仕様を開発した計算機コードに合わせて見直した結果、当初見積よりも廉価で購入できたため。 未使用額は論文発表などの経費に充当する予定である。
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