高温超伝導マグネットの研究開発の過程で、多くの実験が実施され、実際的な課題も明らかになってきた。REBCO線材は遮蔽電流の起因するテープ内の不均一な電磁力により線材とコイルの劣化に繋がる可能性もその一つである。REBCO線材は基板上に約1 μmの超伝導層を結晶成長させた薄膜という脆弱な構造をしているため、超伝導線材端部のマイクロクラックが、高磁場・遮蔽電流による局所的な電磁力によって進展し、コイル性能劣化まで進む可能性が指摘されている。そこで、今年度は、REBCOコイルを対象に線材が経験する巻線時の張力、冷却時の熱応力、励磁時の遮蔽電流を考慮した不均一電磁力により、REBCO線材が受ける応力・ひずみを数値解析によって評価した。 具体的には、巻線間の接触について一体接触、開口接触、すべり接触が再現できるように新たな簡易モデルで近似した上で、遮蔽電流の影響による線材内の電磁力分布の基づいて応力解析を行った。解析では、巻線時の応力(巻線張力(1 kg)による内部応力、曲げひずみ)、冷却時の熱応力、励磁時の電磁力を考慮した。コイルの機械的構造として、(a)REBCO線材 epoxy含浸 絶縁コイル(巻線間が常に接着)、(b)ポリアミド被覆REBCO線材 非含浸 絶縁コイル(巻線間が応力の向きによっては離れる)、(c)REBCO線材 非含浸 無絶縁コイル(巻線間が応力の向きによっては離れる)、(d)REBCO線材 非含浸 SUS共巻き無絶縁コイル(巻線間が応力の向きによっては離れる)、の4パターンの解析を実施した。
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