研究課題/領域番号 |
16K06224
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
造賀 芳文 広島大学, 工学研究科, 准教授 (40294532)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 太陽光発電 / 作業系統 |
研究実績の概要 |
本研究は,電力設備の「停電作業系統」計画についての研究であり,急速に普及が進んでいる太陽光発電(以下,PV)の大量導入に対応する技術を開発することが目的である。停電作業は設備の通電停止をともなうため,電力系統の安定運用について事前に十分な検討・計画をしておく必要がある。しかし,PVはその発電量が天候・日射量に左右され,その日にならないと実際の発電量は分からない。さらに,家庭用PVは面的に広がって分布することから,PVからの電力が電力系統にどのように流れるかもよく分からない。特に,本研究が対象としてるのは年間計画であって,例えば1年後の作業系統を検討することになる。よって,計画段階で太陽光発電による発電量を予測することはほぼ不可能であり,当日がどのような天候であったとしても大丈夫なように準備・計画をしておく必要がある。 昨年度までにまず,停電作業系統をどのように作り上げるかという問題を作業系統構成問題として数学的に定式化した。また,その定式化した問題を解くための解法アルゴリズムを開発し,典型的な例題系統において求解できることを確認した。これらの成果は学会にて発表しており,かつ電気学会論文誌においても発表した。 ただ,上記の計画において,対象とする需給断面(どこでどれくらい電力が消費されていて,その電力を供給するためにどこでどのくらい発電されているか)については従来通りの考え方に従っていた。すなわち,対象とすべきは「最も厳しい需給断面」であるが,それはその時期に最も電力が多く消費・発電されている時間断面であるとの仮定である。しかしながら,PVの大量導入が進むとそもそもこの「最も厳しい需給断面」は今まで通りの考え方でよいのかという疑問が浮かび上がってきた。よって本年度は,PV出力想定の考え方(エリア分けなど)や,どのような潮流状態が厳しいのかという点について検討を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
基本的な定式化,解法アリゴリズムの構築,検証は昨年度までに行った。これは,作業中にさらに事故が発生したとしても需要家が停電しないよう,また厳しい多重事故が起こった場合でも需要家の停電量を最小とするように目的関数に設定したものであった。面的に広がるPVの出力については気象庁の天候区分に従ってエリアを設定し,それらのエリア内の天候がどのようなものであっても上記の技術的制約が満たされるように定式化を拡張したものである。ただ,上記の概要で述べたように,PVの大量導入が進むと,対象とすべき「最も厳しい需給断面」は今まで通りの考え方でよいのかという観点からも,改めて検討が必要であるという考えに至った。 そこで本年度は,学会や技術的な会合に積極的に参加し,まず対象とすべき需給断面についての情報収集,意見交換を行った。それらをもとに,主にPV出力想定の方法や電力系統を流れる潮流の状況という観点から様々な検討を行ってきた。しかしながら,これは制度的な面,運用主体のポリシーの問題になども絡み,技術論文としてすぐに発表できるものでもなく,慎重に議論を進める必要があると判断した。よって,昨年度の「今後の研究の推進方策」にて述べたように,エリアの分割方法の検証や付随する定式化・モデルの改良はある程度実施したが,今年度は特に外部に向けての学会発表や論文発表をしていない。 ただ,これはある程度は予想されていたことであり,かつ考えるべき問題の本質の一部が明らかになったという点では評価できると考えており,最も厳しい需給断面の定義やそれに対する解法などが開発されれば,頑健な作業系統計画がより効率的に策定できる可能性があるため,概ね順調に進展していると評価させていただいた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は,PV大量導入が進んだ場合におけるPV出力予測が不可能な状況に対して,先に述べたように「どのような受給断面が最も厳しいのか」という命題について詰めの議論を進め,具体的に数学的な定式化まで落とし込むことを考える。また,その場合に必要となれば,PV出力の想定方法の改良なども引き続き検討を続けていく。定式化まで達成されれば,その問題に対する効率的な解法も必要となるため,合わせて研究を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 当初,購入を予定していた物品について,実際は想定より低価格で購入することができたため差が生じた。 (使用計画) 研究内容に関する情報収集や,研究成果を発表し社会に還元するため,旅費として有効に活用する予定である。
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