研究課題/領域番号 |
16K06225
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
田中 俊彦 山口大学, 創成科学研究科, 教授 (00179772)
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研究分担者 |
山田 洋明 山口大学, 創成科学研究科, 講師 (00455099)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 電気自動車用チャージャ / 直流キャパシタ電圧一定制御 / PWM整流回路 / 双方向DC-DCコンバータ / 単相三線式配電柱上変圧器 |
研究実績の概要 |
平成28年度では,本研究で提案している電気自動車用スマートチャージャを構成する単相3レグPWM整流回路の直流電圧一定制御ブロックのみを用いた制御法に関して,単相三線式配電線に接続されている家庭内負荷に現代の家電機器に内蔵されているダイオード整流回路を考慮し家庭内の電流がひずみ波となっている状態で,電気自動車用スマートチャージャに流出入する電力フローを詳細に検討し,電力系統側で不平衡電流成分ならびに無効電流成分と高調波電流成分を補償し,正弦波状態でバランスした力率が1.0の電流を実現できることを理論的に明らかにした。 本研究で提案している制御法の有効性を確認するため計算機シミュレーションを行った。シミュレーションでは,6,600 Vrms 配電線から柱上変圧器を用いて単相三線式配電で家庭内に電力を供給するモデルを用いた。シミュレーション結果から,家庭内の電流がアンバランスで高調波を含んでいるが提案しているスマートチャージャの制御法により正弦波平衡状態で力率が1.0の電源電流を実現できることを明らかにした。さらに,Digital Signal Processor (DSP)を中核とした実験装置を構成し,実験による検討を行った。実験では,線間電圧200 Vrmsの三相電源から単相変圧器を介して100 Vrmsの単相三線式配電線の縮小モデルを構築し実験を行った。シミュレーション結果と同様に実験結果から,提案しているスマートチャージャの制御法により正弦波平衡状態で力率が1.0の電源電流を実現できることを明らかにした。 以上から,当初計画していた研究課題を完了することができた。次に,研究計画にしたがって,スマートチャージャを構成するPWM整流回路と双方向DC-DCコンバータのSiC MOSFETs化に着手し,現在,SiC MOSFETs スマートチャージャを構築している途上である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度では,本研究で提案している電気自動車用スマートチャージャを構成する単相3レグPWM整流回路の直流電圧一定制御ブロックのみを用いた制御法に関して,単相三線式配電線に接続されている家庭内負荷に現代の家電機器に内蔵されているダイオード整流回路を考慮し家庭内の電流がひずみ波となっている状態で,電気自動車用スマートチャージャに流出入する電力フローを詳細に検討し,電力系統側で不平衡電流成分ならびに無効電流成分と高調波電流成分を補償し,正弦波状態でバランスした力率が1.0の電流を実現できることを理論的に明らかにすること,提案した制御法の有効性をシミュレーションと実験により確認すること,PWM整流回路と双方向DC-DCコンバータのSiC MOSFETs化への着手を申請書の研究計画としている。 初めに,電気自動車用スマートチャージャに流出入する電力フローを詳細に検討し,電力系統側で不平衡電流成分ならびに無効電流成分と高調波電流成分を補償し,正弦波状態でバランスした力率が1.0の電流を実現できることを理論的に明らかにすることは完了している。さらに,計算機シミュレーションと実験より提案した制御法の有効性を確認することについても完了している。シミュレーション結果と実験結果から,家庭内の電流がアンバランスで高調波を含んでいるが提案しているスマートチャージャの制御法により正弦波平衡状態で力率が1.0の電源電流を実現できることを明らかにした。 これらについて完了したため,研究計画に沿ってスマートチャージャを構成するPWM整流回路と双方向DC-DCコンバータのSiC MOSFETs化に着手し,現在,SiC MOSFETs スマートチャージャを構築している途上である。 以上より,研究計画に沿って研究成果を順調にあげている。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度以降では,平成28年度に着手した主回路のSiC MOSFET 化に関して実験により定量的な検討を行う。これにより,柱上変圧器の効率改善効果と3 レグ構成のPWM 整流回路による電力品質保証による変換器損失との合算値でマイナスとならないことを明らかにする。一方,太陽光発電システム(以下,PV 発電システム)が運転される際に受電端電圧上昇が問題となっている。受電端電圧上昇により,電力会社は太陽光発電システムからの売電を制限してしまう問題点があり,結果的に売電収入が低下することとなる。この問題を解決するため,申請者等の研究グループでは,これまで,有効・無効電流演算ブロックを省略し直流キャパシタ電圧一定制御だけを用いた制御法を提案している。この基本波無効電流調整機能を適用するとSiC MOSFETからなる3 レグ構成PWM 整流回路の変換器容量を30%程度低減できる見込みである。このことは,上記で指摘したPWM 整流回路の変換器損失も30%低減できることを示しており,柱上変圧器の損失低減効果を国レベルで実現できる。さらに,中国電力新小野田太陽光発電所の発電実績公開データから,宇部地区における太陽光発電実績を家庭レベルに換算し,無効電流調整機能による売電制限効果を試算する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究は,3年間研究期間であり平成28年度の直接経費配分額は 2,200,000 円であった。研究計画に従って経費を支出したが,旅費にかかった額が予定より少なく済んだため次年度使用額が発生している。
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次年度使用額の使用計画 |
現時点で,10月に IEEE(米国電気電子学会)Industry Applications Society が主催するパワーエレクトロニクス分野では世界最難関の年次会議へ投稿した Digest が採択されている。この年次会議へ博士後期課程の学生が出席し発表するための旅費に平成29年度分に計上した旅費と合わせて支出する予定である。
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