研究課題/領域番号 |
16K06226
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
寺西 研二 徳島大学, 大学院理工学研究部, 准教授 (80435403)
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研究分担者 |
下村 直行 徳島大学, 大学院理工学研究部, 教授 (90226283)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 誘電体バリア放電 / 難分解性物質 / 水処理 / 酢酸 / OHラジカル |
研究実績の概要 |
本研究では,放電プラズマによる難分解性物質分解の高速化と高効率化を目的とし,誘電体バリア放電(DBD)による水処理技術の開発を行う。平成28年度は水処理リアクタの電極間隔調整装置の開発とインジゴカルミン水溶液による水処理実験,酢酸を用いた難分解性物質の分解特性の調査を行った。本水処理装置において,電極間に処理水を水膜状にして供給する際には,電極間隔を複数回調整する必要がある。従来は電極に取り付けたマイクロメータにより手動で調整していたが,マイクロメータにステッピングモータを設置し,モータドライバを用いて電動で調整できるようにした。これにより水処理装置の操作性が向上し,迅速な水膜形成が可能となった。また,本水処理装置によりインジゴカルミン水溶液の脱色実験を行った。放電ガスとしてアルゴンを使用し,1~2.5 mmの範囲において異なるギャップ長でインジゴカルミン水溶液の脱色特性を調査したところ,ギャップ長が短いほど短時間で脱色が進むとともに,低い投入エネルギーで高い脱色率が得られた。これはDBDのリサジュー図形の測定結果も併せて考えると,ギャップ長が短いほど放電空間の電界強度が高く,電子のエネルギーも高いため,高速電子や準安定励起原子による水分子の解離反応が促進し,OHラジカルの生成量が増加したためと考えられる。これらの成果を平成29年3月に富山大学で開催された平成29年電気学会全国大会において発表した。難分解性物質である酢酸の分解実験については,上記と同様の実験条件で水処理実験を行ったところ,酢酸においてもギャップ長が短い程,高い分解率が得られ,放電空間の短ギャップ化の有効性を2種類の処理対象を用いて確認できた。この成果を平成29年7月にポルトガルで開催予定の第33回電離気体現象に関する国際会議(ICPIG2017)において発表する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成28年度に他大学より難分解性物質の分解特性の評価に有力な全有機炭素計を借用することができたため,装置の立ち上げと動作確認を行うとともに,平成30年度実施予定の酢酸の分解実験の一部を前倒しで行った。また,水処理装置の電極間調整機構の開発も急遽行うこととなったため,平成28年度に実施予定であった水面上で生成したDBDの特性解析については少々遅れ気味である。同特性解析に必要なマルチチャンネル分光器については,予備実験によりその動作確認を行っているので,平成29年度の早い時期に放電空間のガス温度推定と,高速度ICCDカメラと光学フィルタを併用したOHラジカルの観測実験を開始する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度に開発した水処理装置の電極間調整機構により装置の操作性が向上したことで,今後研究を効率的に進めることが可能と考えている。さらに同機構の開発は,平成29年度に実施予定の新たな水処理装置の開発にも大いに役立つものであると考えている。また,平成28年度に酢酸の分解実験を前倒しで行ったことにより,難分解性物質の分解にも短ギャップ化が有効であることを早期に確認できたため,平成29年度に行うDBD特性解析を通して,短ギャップ化による水処理特性向上のメカニズムに迫りたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額は84,396円となっているが,平成29年3月15日から17日で開催された平成29年電気学会全国大会の旅費60,000円とその参加費10,000円の合計70,000円が含まれている。この70,000円は4月に支払い済みである。残りの14,396円については,上記の出張旅費が当初の予定より安く済んだため生じた残額である。
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次年度使用額の使用計画 |
上述の理由により生じた次年度使用額14,396円については,リアクタ製作費や水質調査に必要な試薬,放電ガス等の消耗品の購入に使用する予定である。
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