研究課題/領域番号 |
16K06229
|
研究機関 | 九州工業大学 |
研究代表者 |
花本 剛士 九州工業大学, 大学院生命体工学研究科, 教授 (30228514)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | モジュラーマルチレベルインバータ / 永久磁石同期電動機 / センサレス制御 / オブザーバ |
研究実績の概要 |
本申請では単相フルブリッジインバータを多段に組み合わせたモジュラーマルチレベルインバータ(MMLI)を永久磁石同期電動機(PMSM)に適用しセンサレス制御を実現することを目的とし、本年度、以下の成果を得た。 1.表面界磁PMSM(SPMSM)センサレス起動用オブザーバの構築については、直流励磁の際に,従来より提案している非線形オブザーバで誘起電圧推定を行い測定値と一致した時点で速やかに切り替えを行うように修正を行った。この結果、基準からプラスマイナス90°の範囲で電動機がほぼ逆転することなく指令値方向に回転するようになった。 2.高速域用オブサーバの構築・低速域への拡大を前倒しで研究を行った。ここでは、拡張磁束オブザーバを発展させ,1軸のみのモデルで2軸の誘起電圧を推定する方法を提案し、離散化する場合と修正オイラー法を用いた数値演算を行う場合での実装する際の計算量や推定精度を比較検討した。更に、安定度解析を行い回転数の変化に対しても安定してセンサレス制御ができることを見出した。これらの結果より低速域から高速域まで高精度な推定が可能なオブザーバを構築することができ学会発表4件の成果を得ることができた。 3.モータ駆動以外の適用として配電用無効電力補償装置(DSTATCOM)にMMLIを適用し安定解析を行った。負荷として平衡、不平衡、非線形負荷を考えシミュレーションにて補償器の有効性を確認した。どの負荷条件に対しても系統安定が達成できることを示し、雑誌論文として成果報告ができた。 4.実験用MMLI駆動装置を構築については、単相フルブリッジICを組合せ、主回路を実現した。制御部分は、FPGAを用いてスイッチングパターンを作成し、動作を確認できた。モータ駆動用制御システム構築には、本年度購入したパワエレ用デジタル制御システムを用いて基本動作の確認を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本申請の目的は,MMLIを用いてSPMSMの起動制御,高速度域高性能センサレス制御方法の確立である。申請書には1年目に起動を,次年度以降に高速度域制御を行うことにしていたが,同時進行で行っており,高速度域での制御で一定の成果を出すことができた。特に従来は可変で与えていたオブザーバゲインについて安定度解析を行うことで固定ゲインでも安定して誘起電圧推定すること,ゲイン選定誘起電圧の小さい低速域での推定精度を高めることができることを見出した。 センサレス起動用オブザーバの構築は従来よりも回転制御開始時間が短縮できる可能性がある切替え方式を考え,実験により確認中である。適用範囲がプラスマイナス90°に留まっているので次年度以降に引続き提案手法を改良する。 MMLIを用いた制御系構築を行なうために,今年度の予算で購入した制御開発環境を用いてモータ制御の基本動作確認及び,MMLI主回路の作成を行った。制御開発環境装置を用いてインバータに送るPWM発生部分をFPGAで作成することができ,出力本数の増加に対応できることを確認した。一方でMMLI主回路に関しても単相フルブリッジICを用いて9レベルまでの出力を得ることができておりおおむね順調に進展している。
|
今後の研究の推進方策 |
今後の研究は,当初計画に従って行っていくが,特にMMLI制御装置を構築し,センサレス駆動を行うことを重点的に実施する。初年度PMSMで得られた成果は通常の電圧形3相インバータでの実現されたものであるので,まずMMLIを用いて同様の結果が得られるかどうかの確認が必要となる。その上で電源電圧変動がセンサレス制御系に与える影響,PWM周波数などのMMLI独自のパラメータを解析することが重要であると考えている。また,SPMSM起動からセンサレス駆動までのスムーズな切り替えのためには初年度の成果と組合せる必要があるので,提案しているオブザーバがそのまま適応できるかどうか確認していく。 並行してモータ駆動系以外への適用についても,考察を進めていく。初年度に検討したDSTATCOMについては新たなPWM発生アルゴリズムの検討,系統負荷変動時の補償範囲の拡大などを検討する。またSTATCOM以外でも電力安定供給の実現のためには,交流出力電圧の高調波低減,変換器効率の向上が求められているため,MMLI試作機を用いて特性把握,性能把握を行っていく。
|
次年度使用額が生じた理由 |
モジュラーマルチレベルインバータ製作のため、必要な部品を購入したが、一部仕様変更のため残金が生じた。
|
次年度使用額の使用計画 |
差額については、元々計画していた実験用MMLI駆動装置を構築するために必要な部品の購入に使用する。平成29年度分助成金については、3相インバータ用ICをMMLIに利用する回路作成費及び研究成果公表用の旅費、学会参加費としての使用を計画している。
|