本研究課題では,応力テンソルを考慮した磁界・構造併用解析による鉄損計算法を開発するとともに,誘導機に適用して,応力による鉄損増加のメカニズムを明らかにし,その低減を図る. これまで,鉄損計算法に関しては,応力を考慮したヒステリシスのモデリング手法では磁界エネルギーに基づくモデリング手法が必要となるため,自由エネルギーを用いたモデリング手法を開発した.また,鉄芯中の応力分布の計算に必要な局所的な力の分布を算出するためのマクスウェルの応力テンソルに関して新しい表現方法を提案した.さらに,回転鉄損を精度良く計算するため,回転磁界を長軸と短軸方向に分解して鉄損を計算する簡易鉄損計算法を提案した.誘導機の鉄損解析に関しては,回転子のスキューを考慮するため,斜め非適合分割図の解析方法を開発するとともに,鉄芯の積層構造を考慮した誘導機の鉄損解析を行った. 本年度は,最終年度として,これまで開発した鉄損計算法を拡張するとともに,妥当性と有用性の検討を行った.すなわち,本研究で提案した新しいマクスウェルの応力テンソルに関しては,実際の鉄芯モデルを用いて,得られる全体力と局所力を,従来の応力テンソルであるMinkowskiモデルとChuモデルを用いた場合と比較し,全体力は全ての方法で一致するが,局所力は方法により大幅に異なり,新しいマクスウェルの応力テンソルの必要性を示した.また,回転鉄損の計算方法に関しては,飽和領域では回転鉄損が小さくなる現象及び軸比が異なる楕円磁界も考慮できるように改良するとともに,開発した回転鉄損の簡易計算法を実測値を用いて検証し,その妥当性と有用性を示した.
|