研究課題/領域番号 |
16K06233
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研究機関 | 滋賀県立大学 |
研究代表者 |
乾 義尚 滋賀県立大学, 工学部, 教授 (70168425)
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研究分担者 |
田中 正志 茨城大学, 工学部, 講師 (40583985)
平山 智士 滋賀県立大学, 工学部, 助教 (70759274)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | リチウムイオン電池 / 発熱推定 / 交流インピーダンス特性 / 等価回路 / 電池モジュール / 温度上昇 |
研究実績の概要 |
リチウムイオン電池モジュールを電動機駆動用や電力調整用の蓄電池としてその能力を最大限に引き出すためには,その高精度な動作特性シミュレータが必要不可欠である.リチウムイオン電池モジュールは,充放電時の発熱により顕著な温度上昇が発生し,しかもその温度上昇により特性が変化してしまう.従って,電池モジュールのシミュレータ構築には,電池の発熱量の正確な推定と温度上昇の計算手法の確立が必要不可欠である.そこで,本研究ではまず,リチウムイオン電池充放電時の発熱量の高精度な推定が可能な新しい詳細発熱計算手法を開発する.次に,以前の研究で開発済みの単電池の過渡応答シミュレータと劣化評価手法をそれと複合し発展させて電池モジュールの発熱と劣化を考慮した動作特性シミュレータを構築し,さらにその妥当性を確認することを目的としている. 平成28年度は,本研究の初年度であり,まず,円筒型リチウムイオン単電池を対象として,以前の研究で開発済の手法によりその過渡応答特性を詳細に模擬することができる等価回路を導出し,その回路を利用してパルス充放電時でもリチウムイオン電池の発熱量を精度よく推定することができる新しいリチウムイオン単電池の詳細発熱計算手法を提案・完成させた,さらに,劣化前および劣化後の円筒型リチウムイオン単電池の充放電時の発熱量を,種々の充放電条件の場合について,熱量計を用いて詳しく測定し,測定結果と提案手法による推定結果を比較して,劣化の有無にかかわらず両結果が一致することを確認することにより,今回提案した新しいリチウムイオン単電池の詳細発熱計算手法の妥当性を示した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度の当初目的は,パルス充放電時でもリチウムイオン電池の発熱量を精度よく推定することができる等価回路を利用した新しいリチウムイオン単電池の発熱計算手法の提案・完成とその妥当性の確認で,研究実施計画は次の通りであった. まず,「①単電池の発熱量の高精度な推定が可能な等価回路を利用した詳細発熱計算手法の開発」を行う.具体的には,リチウムイオン電池の単電池を対象として,まず,その交流インピーダンス特性を詳細に測定し,その特性から電池の高精度な等価回路を導出する.次に,その電池の等価回路を利用してパルス充放電時でも発熱量を精度よく推定することができる,新しい発熱計算手法を提案・開発する.次に「②熱量計を用いた測定結果との比較・検討による提案詳細発熱計算手法の妥当性の確認」を行う.具体的には,円筒型リチウムイオン単電池の充放電時の発熱量を,種々の充放電条件の場合について,熱量計を用いて測定し,測定結果と提案手法による推定結果を比較・検討することにより,提案手法の妥当性を確認する.なお,電池充放電時の吸発熱には内部抵抗によるジュール発熱によるもの以外にエントロピー変化によるものもあるので,推定結果と測定結果がうまく合わない場合には,このエントロピー変化の推定法についても再検討することにより解決を図っていく. 実績としては,エントロピー変化の推定法について特に問題が発生することもなく,劣化前電池および劣化後電池の両方について,上記の①および②の両方を年度内に終了することができており,概ね順調に進展しているものと判断している.
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は,リチウムイオン単電池の発熱を考慮した動作特性シミュレータを構築し,さらにその妥当性を確認する予定である.研究実施計画は次の通りである.まず,「①詳細発熱計算手法を組み込んだ単電池の発熱を考慮した動作特性シミュレータの構築」を行う.具体的には,開発済のリチウムイオン電池の発熱計算手法を用いて単電池の温度解析コードを作成し,既に開発済みの過渡応答シミュレータと劣化評価手法を組み合わせて,発熱と劣化を考慮して単電池の温度変化を精度よく計算可能な動作特性シミュレータを構築する.次に「②実験結果との比較・検討による発熱を考慮した単電池用シミュレータの妥当性の確認」を行う.具体的には,自然対流により冷却されている円筒型リチウムイオン単電池を対象として,その充放電時の温度変化を種々の充放電条件の場合について詳細に測定し,測定結果と解析結果を比較・検討してシミュレータの妥当性を確認する. 平成30年度は,リチウムイオン電池モジュールに対する動作特性シミュレータを構築し,さらにその妥当性を確認する予定である.研究実施計画は次の通りである.まず,「①単電池用シミュレータの拡張・発展によるモジュール用動作特性シミュレータの構築」を行う.具体的には,前年度に構築したリチウムイオン単電池用のシミュレータを拡張・発展させて,電池モジュールを取り扱えるようにし,モジュール用の動作特性シミュレータを構築する.次に「②実験結果との比較・検討によるモジュール用の動作特性シミュレータの妥当性の確認」を行う.具体的には,リチウムイオン電池モジュールとして電動アシスト自転車用バッテリを用い,充放電時の温度分布変化と各電池の電圧過渡応答を種々の充放電条件の場合について詳細に測定し,測定結果と解析結果を比較・検討することにより,本シミュレータの妥当性を確認する.
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度は,実験が順調に進み,試行錯誤があると増大する試験用リチウムイオン電池等の消耗品の消費が抑制できたため,その節約分の約12万円が残り,次年度使用額となった.
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度は,学会等での研究成果の発表を当初予定よりも活発に行う計画であるので,上記の平成28年度の残額はそのための旅費として有効に活用する計画である.
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