超高度化鉄道システム実現には超高頻度運行が必須である。本研究では,特に近年実際の鉄道路線において実績の蓄積が進む信号システム「純移動閉塞(PMB)」を主な前提としつつ,超高頻度運行計画およびその管理の手法が数多く存在しうることを示した。 例えば,鉄道における分岐は地上分岐であり,分岐上の列車の経路を列車自身でなく地上側に設置した転てつ装置により定める。このことは,分岐上のある経路に沿って走行した列車の直後に当該分岐上の別経路に沿って別な列車が走行するとき,これら列車間の時間的間隔の最小値の短縮における障害となる。そこで,PMBにおいて用いる減速度パラメータを通常値と特別に高い値の2個用意し,分岐手前でのみ特別に高い値を用いることで,この障害を事実上回避する方法を提案した。ただし,現在の列車位置検知手法では,その精度が低く,検知遅れ時間が長い,といった問題があり,提案手法の導入以前にそれらの解決だけで現状に比して大幅な時隔短縮が可能なことも,同時に示された。この他,本研究では現存する固定閉塞信号システム(FBS)および PMB,あるいは現存しないが古くから理論的に提案されている相対移動閉塞システム(RMB)およびソフト連結など,様々な鉄道信号システムについて時隔等の数値的計算による比較などを行い,今後の超高頻度運行の実現に向けた基礎的知識の蓄積を図った。 また,超高頻度化の実現においては,複雑化する運行計画における案内の的確化に加え,混雑の偏りの防止等を通じ,輸送力の有効利用と運行の頑健性の向上を図る必要があることが自明である。このためには乗車時間の短い都市鉄道でも座席予約を行うことが有効で効果が高いことを論証した。このような発想は従来の鉄道出改札システムの実情に即し考えれば実現不可能だが,現在のICT技術の水準からみれば十分可能であることも,様々な角度から論証した。
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