研究課題/領域番号 |
16K06242
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
熊野 照久 明治大学, 理工学部, 専任教授 (80371243)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 電力系統 / 電力市場 / 需給制御 / M-Gセット / 発電費用 / 分散電源モデル |
研究実績の概要 |
本研究では2020年時点での我が国の電力システムにおける需給運用・需給制御のルールを提案する。そのために変分法に基づく最適化手法を開発し,関連各社への聞き取り調査を反映した複数の条件下で求めた最適解の間でDEA法を用いて整合をとり,ルールを抽出する。 2018年度の研究は以下のような概要である:(1)研究室に既設のM-Gセットの消費電力特性の実測に誤りがあり,これから得られた数値モデルの見直しを行った。(2)これに伴い,既開発のプログラムコードを修正した。(3)2017年度以来行っている関係各社への聞き取り調査の結果,分散電源が持つ重要性がクローズアップされたことに伴い,本研究で予定していたM-Gセットに代わって,分散電源を表現するパワーエレクトロニクスベースの系統連系分散電源装置を導入した(学内別予算を充当)。なお,M-Gセットの導入については次年度以降に持ち越すこととした。 これらの意義は以下のように説明される。(1)これまで当研究課題では従来型発電所の持つ優位性に基づき,今後も需給制御の主力は回転形化石燃料発電であるとの前提のもと,M-Gセットにて発電要素をモデル化することとしていたが,今後分散電源の増加によって,これら発電要素の運転の様相も変化し,これまでの一定出力ベースの運用では十分ではなく,発電費用の面でも見直しが必要であることが分かった。これは聴き取り調査によって判明したことである。(2)本研究の主要なアウトプットは運用・制御ルールであり,これは具体的に,この開発プログラムコードの出力から導かれる。従ってこれに必要な変更を加えることで本研究の成果物の妥当性が向上した。(3)本研究で行う実験にも分散電源の運用状態の変化をメニューとして入れ込む必要が生じた。このため,新たな発電モデルを導入して,これに備えた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
「研究実績の概要」に記したように,関係各社への聞き取り調査によって,当初想定以上に分散電源が大きな影響を及ぼしていることが判明した。このため,これまで発電容量面での寄与の意味で無視しうるとしていた,これらの分散電源をコーディング面にも実験面にも入れ込む必要が生じた。 これら両面での必要な調整を行っているために,当初予定していたほどの研究成果に結びついていない。
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今後の研究の推進方策 |
1.推進方策 (1)2019年度 ①2018年度に新たに導入した分散電源実験装置の使用に習熟する。②分散電源変動を入れ込む形でのプログラムコードを新たに作成し,性能を確認する。③可能であれば,実験装置との比較検討を通じて開発プログラムの性能を検証する,あるいは必要な改善を実施する。 (2)2020年度 上述のように必要な修正を施したプログラムを多数回実行することで,実際にも適用可能なルールを策定する。さらに,この結果を外部発信して可能な範囲でフィードバックをシステムに反映する。 2.研究遂行上の課題 今後も安定した新規導入が見込まれる自然エネルギー発電による分散電源は,既存の電源とは異なり,発電電力が不確定的に変動する。これは将来の電力系統運用において,一定のフレクシビリティーを付与しなければならないという制約を生む。この制約は単に変動の量だけでなく,速度にも大きく依存するなど取り扱いが難しい。これを数値計算上で,どのように扱うか十分検討する必要があるとともに,実験的検証においても実施,評価が難しい。
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次年度使用額が生じた理由 |
既述のとおり,当初想定以上に太陽光発電等に代表される分散電源の系統導入量が伸びたために,系統運用方策を決定する上で,その寄与を十分考慮する必要が新たに生じた。このため,既存回転形電源装置の導入に充てるべく当初想定していた予算を,これら分散電源特有の要素である不確定性の実験への取り込みに必要となる実験装置の追加に充てることを想定して,以前からの計画支出を見送った。 見送りによって生じた次年度使用額は,不確定変動出力の影響によって生じる,系統運用状態の変動を実験的に再現するための装置追加に充当する予定である。
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