本研究は2020年代の我が国の電力システムにおける需給運用・需給制御のルールを提案する目的で開始した。系統運用問題を関数最適化の観点からとらえ,時系列で記述される操作,運転を時間関数として記述,関数最適化を行う既開発手法を足掛かりに導出される最適操作運転について関係各社への聞き取り調査を実施し,そこで得られる人間系の現象把握と対応を定式化しルールを抽出することを試みた。コロナ禍前の2016年度より5年間の予定で開始したが,コロナの影響で一年延長し2021年度に終了した。 ここでは需給運用を実際に研究室レベルで再現,確認するための小形発電所模擬装置(M-Gセット)の特性把握を行い,これを考慮しての運用最適化をコーディングするとともに,関係各社への聞き取りも平行して進めた。さらに,研究を進める中で各社とも太陽光発電等に代表されるパワエレ連系型の分散電源の取り扱いや,その出力変動への対策に最も苦慮していることが明らかとなったため,当初の計画を変更し,こうした機器の模擬系統表現を可能とすべく小形インバータのハードウエアや制御ソフトウエアの開発を実施し,こうした検討を重要な要素として加えることとした。 ついで各社への聞き取りを強化,さらに調査と最適化コードへの取り込みを行うところにおいてコロナ禍が問題となった。オンラインでの聞き取り調査は従来の出張での調査と比べ格段に重要な点での情報取得が困難になり,ルール抽出上必要な調査が事実上不可能となった。 このため,既開発の最適化手法の性能改善と,電力系統動特性解析プログラムのモデルの再検討により取り扱う時間幅を1日程度まで延伸,各種の不確定要素をも考慮した模擬実現象再現のプラットホームとした。検討により不確定性が最大の問題になることが判明したため,これを新しいテーマとして設定し,新たに研究を開始することとした。
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