研究課題/領域番号 |
16K06247
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研究機関 | 愛知工業大学 |
研究代表者 |
雪田 和人 愛知工業大学, 工学部, 教授 (60298461)
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研究分担者 |
後藤 泰之 愛知工業大学, 工学部, 教授 (70178458)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 再生可能エネルギー / 電力工学 / マイクログリッド / スマートグリッド / 電力システム / 制御工学 |
研究実績の概要 |
再生可能エネルギーや分散型エネルギーによる発電装置と蓄電装置などで構成されたマイクログリッドは,従来型の電力システムと比較しても頑強であり,自立して電力供給ができるという特徴がある。このため,電力システムに連系されたマイクログリッドを系統の需給制御と協調して運用することにより,電力システム改革後の電力需給に大きく貢献できるものと期待される。 そこで 研究で開発するアクティブ型マイクログリッドは,今年度、基礎的な検討結果を考慮して以下のように実施した。 (1)変換器の電流制御と電圧制御手法の開発 これまでの実験結果を考慮して,双方向変換器の再設計を実施した。設計内容としては,変換器の連系時における電流制御と自立運転時の電圧制御手法について検討を行った。さらに,受電電力制御(受電電流制御),供給電力制御(逆潮電流制御),電圧制御について検討した。このとき,受電電流制御を実施するときの電流観測地点に関して、変換器の出力側あるいは入力側での優劣について検討を実施した。この結果,変換器容量と蓄電装置の容量に関しての検討が必要であることを明らかにした。 (2)双方向変換器の製作 上記(1)にて設計した内容について,10kW双方向変換器の製作を実施した。この製作では,電圧制御に関して高速な制御が必要であったため,高速制御可能なDSPシステムを用いた。さらに,分散型電源の一つである太陽光発電装置の最大負荷追従装置に関して,次世代半導体である窒化ガリウムを用いて製作を実施した。 (3)小規模系統での基本動作の確認実験 大学に設置している発電機,商用系統,電子負荷などを用いて,実験室規模のグリットを構成し基本動作について実験した。このとき,これまで未検討であった発電機の制御についても,DSP制御を用いて調速機制御,自動電圧制御装置についての制御系の設計も行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の実施計画は,おおむね計画通り実施できている。その理由を以下に述べる。計画は、(1)変換器の電流制御と電圧制御手法の開発,(2)双方向変換器の製作,(3)小規模系統での基本動作の確認実験の3項目である。 (1)変換器の電流制御と電圧制御手法の開発 この項目に関しては、DC/DC変換器とAC/DC変換器に関して,これまで研究室で保有していたDSP制御装置を用いて制御系の設計を試みた。しかし、サンプル周期や制御周期が遅かったため,目標とする制御特性が得られなかった。そこで,高速制御が可能なDSP制御装置を入手し,目標とする制御特性を得ることができた。ただし,電流制御と電圧制御の動作移行については現在実施できていない。このため、今後、この動作モードの移行について検討する必要がある。 (2)双方向変換器の製作 この項目に関しては、AC/DC変換、DC/DC変換に関して実現できている。しかし、実際に系統連系ならびに分散型電源が導入された場合には、周波数リレー、電圧リレー、最大負荷負荷追従装置などが必要となる。このうち、最大負荷追従装置に関しては、次世代半導体である窒化ガリウムを用いた装置を製作した。 (3)小規模系統での基本動作の確認 この項目に関しては、(1)と(2)の項目と連携した内容であるが、上記で実施できている内容にて実施した。さらに、本研究で実施するアクティブ型マイクロ/スマートグリッドは,変換機だけでなく,発電機などの動作についても検討しなくてはならない。このため、発電機の制御系である調速機と自動電圧調整器についても、DSPにて制御装置を設計した。
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今後の研究の推進方策 |
今後特に、来年度は,上述した昨年度実施できなかった内容を実施するとともに、計算機シミュレーションと小規模実験との二つの方法から検討し,より実システムに対応する制御手法の開発を行う。 (1)マイクログリッドの運転状況と電力システムの状況を考慮した動作方法の確認 本研究で提案しているアクティブ型マイクログリッドの運転状況を考慮した制御手法を確立する。このとき,マイクログリッドでの蓄電装置の状況把握が重要となるため,変換器の入出力電流について積算値から蓄電装置の容量を算出するロジックの開発を行う。さらに,マイクログリッドと連系している電力システムの状態を把握するため,外部情報の入力値について検討を行う。 (2)電力潮流制御装置との協調制御手法の確立 電力潮流制御装置との協調制御手法に関して検討を行う。特に,ここでの検討では,マイクログリッドの蓄電装置における直流電圧の動作特性について,電力潮流制御を実施した場合について注目し検討を実施する。 (3)マイクログリッドの運転状況,連系する電力系統の運転状況,潮流制御の状況に応じた制御手法の確立実験 上記(1)と(2)で検討した内容から,提案するアクティブ型マイクログリッドの制御手法を確立する。このとき,シミュレーションにおいて,制御実施時での各素子などの耐圧について検討し,過電圧や過電流などの対策,いわゆる保護装置について検討する。さらに,再生可能エネルギーや分散型エネルギーを模擬した小型変換器,発電機も導入し小規模系統を構成し,実システムに近い実験的検討を行う。そして,装置の仕様を正確に把握するため,系統故障およびシステム故障を疑似的に発生させ,装置と保護装置の動特性についても検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
変換器の制御系に関してより、高速なDSP装置が必要となったため、変換装置の購入ではなく、変換器の制御系に特化した制御関係の装置を購入したため。
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次年度使用額の使用計画 |
上記の変更のみで、申請書の計画通り実施する予定である。
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