研究課題/領域番号 |
16K06251
|
研究機関 | 秋田工業高等専門学校 |
研究代表者 |
安東 至 秋田工業高等専門学校, その他, 教授 (20212665)
|
研究分担者 |
大石 潔 長岡技術科学大学, 工学研究科, 教授 (40185187)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 一般化イミッタンス変換器GIC / 三相正弦波コンバータ / 三相電流センサレス / パラメータ誤差 / デジタルシグナルプロセッサDSP / 一括補償法 |
研究実績の概要 |
本研究では,GICを用いた電子回路モデルにより,直流センサのみで三相電流を簡単に復元し,三相電流センサレス正弦波コンバータを実現する手法を開発する。 平成29年度は,開発した電子回路モデルによる三相電流復元能力を設計通りに高めるため,1.GICのオフセット現象や電子回路モデル内の微小電流検出時のノイズ対策の改善. 2.電子回路モデルと主回路間の使用素子パラメータ誤差一括補償制御の実施, 3.電子回路モデルでのダイオード閾値の対策 を行なった. 1.については,実験室レベルでは電子回路モデルで0.5mAレベルの電流(実機換算で12.5Aレベル)以下ではノイズの混入が大きく,電流波形を良好に復元できない状況であった.そのため,主回路と電子回路モデルの電圧・電流比を変更し,GIC回路の再設計を行うもオペアンプ出力の限界による正確なリアクトル模擬が難しい問題が生じた.これらの対策として,電流フィードバックゲインの高速リアルタイム可変制御を採用し,電子回路モデルでは常に3mAレベル(実機換算で75Aレベル)の電流による電流復元を可能にし,可変ゲインを考慮したフィードバックによりノイズ対策を含め電子回路モデルの能力を高めた.2.3.については,電子回路モデルにおける素子ON閾値は無視できるレベルに小さい実機素子ON閾値に比べ大きい.そこで,電子回路モデルによる復元電流とスイッチングによるデューティー比から電子回路モデルのDC電流を算出し,パラメータ誤差一括補償制御を実施することでON閾値レベルとパラメータ補償を可能にした.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
提案する「GICを用いた電子回路モデルによるコンバータの三相電流復元とセンサレス制御」において,平成28年度は,GICを用いた電子回路による三相コンバータのモデル化を行い,モデルと実機における使用素子間のパラメータ誤差一括補償法を開発するとともに,復元した三相電流を用いた三相電流センサレスコンバータにおいて入力力率98%以上,入力電流高調波歪率THD5%以下,出力電圧変動率1%以下を達成するための基本制御DSPプログラムを開発した. 平成29年度の計画では,主に1. GICのオフセット現象や電子回路モデル内の微小電流検出時のノイズ対策を実施.2.電子回路モデルと主回路の使用素子パラメータ誤差一括補償をそれぞれ実施し,復元した三相電流を用いた三相電流センサレスコンバータにおいて,入力力率98%以上,入力電流高調波歪率THD5%以下,出力電圧変動率1%以下を試作機において達成する計画であった. 1.および2.についてはデューティー比を用いて三相復元電流からDC復元電流を演算したり,可変フィードバックゲインによる一括制御を採用するなどの対策を講じ,シミュレーションによる動作確認と良好な結果を確認することはできたが,試作機に組入れるまで進めることができなかった.しかし,これらの対策の結果,GICの設計を容易にすることが可能となり,また,主回路や電子回路モデルに使用する素子に大きく左右されないセンサレス化が可能となるなど当初の計画に無かったメリットも生まれ,その効果は大きいと判断される.なお,早急に,開発した対策事項を試作機に組み込み,上記コンバータ特性の確認を行う予定である. 以上のことから,進捗状況はやや遅れていると判断した.
|
今後の研究の推進方策 |
平成30年度は, H29年度に開発した電子回路モデルのノイズ対策制御やデューティー比を活用した電子回路モデルと主回路の使用素子の閾値を含むパラメータ誤差一括補償を試作機に組み込み,復元した三相電流を用いた三相電流センサレスコンバータにおいて,入力力率98%以上,入力電流高調波歪率THD5%以下,出力電圧変動率1%以下の制御性能が達成できることを確認する. コンバータにおいては,交流側電流が正確に検出できれば,電源電圧センサも容易にセンサレス化できることを実証済みであることから,復元電流を用いた交流側電圧・電流センサレス三相コンバータの開発に展開する.起動や瞬時停電,電源電圧低下などの各種電源異常時についてもコンバータの安定動作の検証をシミュレーションと試作機を通じて実施する. さらに,開発した電子回路モデルを活用したセンサレス化手法の三相コンバータ以外の電力変換器への適用を検討する.平成24年から平成26年に科研費の補助を受けて開発したロスレススナバを組み入れたインターリーブ式高効率AC/DCコンバータはソフトスイッチングを実現するために3つの電流センサを使用している.GICを用いた電子回路モデルによる提案する電流復元手法を活用して各部電流復元を行えば1つの電流センサで実現できる可能性があり,9月までにシミュレーションで検討を行う。その後,既に実機にて動作している電流センサを用いたAC/DCコンバータに電子回路モデルによる電流復元と電流センサレス化手法を適用し有効性を探る。
|
次年度使用額が生じた理由 |
経費使用について,十分な吟味を行い使用した結果,残金として16円生じたものであり,次年度使用を積極的に計画したものではない.したがって,平成30年度経費は当初の計画にそって,電力用半導体素子や各種制御用IC,記録紙やデータ保存用DVDを購入するとともに,研究打ち合わせ旅費及び研究成果の発表旅費に活用する.
|