研究実績の概要 |
平成30年度は,GIC回路を用いた電子回路モデルによる三相電流の復元において,リアルタイムフィードバックゲイン補償およびそれに伴う位相補償法などを開発し,軽負荷時の電流復元能力を高めた。 主回路と電子回路モデル間の使用素子パラメータが異なることから生じる三相電流復元誤差を補償する直流部電流一致制御を行うにあたり,電子回路モデルを流れる直流部電流を検出する。しかし,微小電流センサをモデルに組み込むとセンサの内部インピーダンスの影響を受け,モデル回路そのものが変化する問題が生じる。そこで, PWMスイッチング信号を生成する変調波から求めたスイッチングデューティー比とモデル三相電流からモデル直流部電流を算出することでその影響を除去する手法を提案採用した。 モデル三相復元電流は主回路三相電流に比べて1/25000倍で設計されおり,復元電流がmAオーダー以下になるとノイズ等の誤差が大量に含まれる。この対策として,ノイズ対策を施すとともにリアルタイムフィードバックゲイン補償を提案した。この補償はノイズの影響を受ける微小復元電流時に,ノイズの影響を除去できる大きさの電流があたかも主回路に流れているように模擬するフィードバックゲインをPI補償器を用いてリアルタイムに調整するものである。また,この補償においては,実電流より大きさのみ大きくフィードバックされるモデル電流のため,制御系には位相補償が必要となり,電子回路モデル内の電源電圧の大きさと位相を調整,制御する手法も提案,採用した。 これらリアルタイムゲイン補償と位相補償による三相電流復元能力向上について,シミュレーションにより検討を行い,軽負荷時においても三相電流復元が適切に行われることを確認した。 以上の結果より,本研究は,三相コンバータへの適用のみとなったが,基本的には当初の目的は達成できたと思われる。
|